隠居の独り言(816)

京都では攘夷派の旗頭の長州藩が、佐幕の会津藩薩摩藩に追われ、大阪の
勝海舟の海軍塾の竜馬(福山雅治)達の土佐勤皇党にも藩主から帰国命令で
全国の攘夷派に弾圧が始まった頃、アメリカではリンカーンが大統領になり
奴隷制度をめぐって内戦が起き、所謂、南北戦争の最中で日本どころでなく
黒船来航以来萎んでしまったが、替わってイギリス、フランス、ロシア等が
押し寄せてきた。攘夷の運動は薩摩が生麦事件のあと薩英戦争にまで発展し
長州は下関で四カ国連合艦隊と砲火を交えた。アメリカの内戦が無かったら
日本の歴史は大きく変わっていただろうが、でも時代の流れは開国の方向で
安政6年には長崎、横浜、函館で欧米諸国に門戸を開き200年以上も続いた
鎖国の国是はここに終結を迎える。ドラマは帰国命令を無視した竜馬は再び
脱藩浪人になってしまうが、竜馬が身を寄せる大和屋のトク(酒井若菜)は
土佐の近藤長次郎大泉洋)を心配していた。かたや竜馬にも姉の乙女から
金五両が届けられるが、たまたま泊まった宿で、ヤクザ者に連れて行かれた
妹を助けに行こうとしていた、龍(真木よう子)に持ち合わせた五両を渡す。
将来、夫婦となった二人の出会いだが、折角、姉から頂いたお金を無造作に
使ってしまう竜馬の金銭感覚は淡白なもので、そこは土佐の豪商・才谷家の
血を引く坂本のお坊ちゃんならではの幕末の志士の中でも抜きんじたもので
武士からぬ商人らしさが生涯を彩る。海援隊薩長連合、船中八策、等々の、
常人の及ばぬスケールの竜馬の業績も経済的な心理面の一因もあると思う。
劇中、半平太(大森南萌)が捕らえられ、上士・後藤象二郎青木崇高)が
行なった獄中での拷問の残虐さや、似蔵(佐藤健)が街を逃げる悲しさなど
心が搾られるが、志士たちが必死に生きた幕末の象徴的なシーンなのだろう。