隠居の独り言(825)

NHK大河ドラマ「竜馬伝」は愈々佳境に入っているが、勝燐太郎(武田鉄矢)と
竜馬(福田雅治)の関係を整理したい。勝は名もなき幕臣の一人に過ぎなかったが
ペリー来航のとき老中・阿部正弘に海防意見書を提出しそれが老中の目に止まって
念願の役入りを果たし勝は人生の運を掴む。その後、長崎の海軍伝習所に入門する。
本来の秀才は伝習所でオランダ語を習得し、またこの時期に薩摩藩主・島津斉彬
知遇を得て幕末期の行動にも大きな影響を与える事になる。勝の心を大きく変えた
世界感覚は、咸臨丸で幕府の日米修好通商条約の批准書交換のため渡米したことで
アメリカの国情を知って日本国内のチマチマした仲間喧嘩のような世情との違いを
痛烈に感じたことは「人間のすることは古今東西同じでアメリカ人も変わらない。
日本と違うのは政府も民間も、およそ上に立つ人は地位相応に利口な人間です」と
幕府の要人に話している。身分や家柄で指導者が決まる日本の仕組みでは繁栄など
ありえないと弟子になった竜馬に伝え彼は痛く感じ入る。竜馬は勝によって開花し
その後の人生を大きく変えていくが、幕末のこの時期の日本は倒幕・佐幕の内戦の
次元で、未だ西郷隆盛高橋克実)や桂小五郎谷原章介)など藩のリーダーにも
世界感覚は芽生えず数年後に薩長が連合するという難事を達成したのも仲立ちした
竜馬の勝から教えられた国際感覚が両者を共鳴させたのではないか・・・あの頃の
国内の諸藩の中で藩士の統制が取れ藩命ならば死も怖れない兵馬最強の藩といえば
薩摩・長州・会津の三藩のみで、始めは長州が仲間はずれにされたが薩摩・会津
今は互いに狼子野心で、やがて会津は幕府とともに朝敵とされていくストーリーが
幕末後半の山場になっていく。ドラマは神戸の海軍操練所が閉鎖されることになり
勝は薩摩藩西郷隆盛に竜馬を合わせる。竜馬は隆盛にこの期に薩長が戦っている
場合ではないと説得するが、逆に隆盛は長州も幕府も信頼出来ないと反論をする。
勝からは操船技術を持つ竜馬たちの操練所の人間を薩摩に引き取ってもらうように
頼まれていたが竜馬は長州を討った薩摩に従う気持ちにはなれなかった。といって
脱藩者の身では土佐へも帰れない。その土佐では岩崎弥太郎香川照之)が半平太
(大森南萌)から預かった毒を拷問に苦しむ以蔵(佐藤健)に食べさせようとする。