隠居の独り言(833)

大河ドラマ「竜馬伝」も前半が終わって、今週から後半の第三幕の始まりだが、
今回は視点を変えて書いてみる。そもそも竜馬という人物は今でこそ国民的な
歴史上の英雄だが、これは司馬遼太郎1963年の小説「竜馬がゆく」の作品の
発表後の影響力が圧倒的で殆どの日本人の持つ竜馬像は決まったといっていい。
一介の素浪人が亀山社中という株式会社を興し株主に薩摩、長州、越前を迎え
やがて政治的にも薩長連合を結び、やがて日本を変えていった不世出の英雄も
夢の途中で横死したために幕末史の片隅に追いやられ、消えそうになっていた
竜馬を掘り起こした司馬遼太郎は今更ながら素晴らしいと思う。今また作品を
読み返しても新しい魅力に溢れるのは文章もさることながら竜馬の生きた道が
なんと男らしく優しさと厳しさに満ちたものであったか再び惚れなおしている。
そこで感じるのは大河ドラマ「竜馬伝」で竜馬演ずる福山雅治は格好良過ぎて
写真で見る人物のイメージとは程遠い!写真の竜馬は目が細くて口が一直線で
どちらかといえば平凡な醤油顔は何処にもいそうな純日本人的な顔付きだろう。
そこで今までの映画やTVドラマで坂本竜馬を演じた俳優をPCで調べてみた。
北大路欣也中村錦之助藤岡弘、原田芳雄武田鉄矢上川隆也江口洋介
市川染五郎そして今回福山雅治とくるが、どの俳優も目鼻立ちがしっかりして
イメージが出てこない。竜馬の人物像は残存している古い写真から想像すると
どこにも居そうな平凡な顔した青年で、とても二枚目の姿格好ではなさそうだ。
しかも20代の後半で活躍した竜馬の役柄を福山始め40代の俳優が演じている。
この辺はやはり高齢化社会の影響でTVの視聴者が年齢に関する感覚が違って
きているのではないか、そんな気がしてならない。人物の歳など差し引いても、
大河ドラマは歴史上の人物のイメージがあるからキャスティングの当り外れの
落差が大きいが本来の竜馬はもっと泥臭い人間ではなかっただろうか?配役に
あまりの美男子だと幕末の志士らしくなく、それでも視聴率からは人気俳優を
もってくるだろう。司馬遼太郎が「竜馬伝」を見たら何というか?