隠居の独り言(836)

女性86,44歳、男性79,59歳、報道によれば平成21年の日本人の平均寿命で
男女ともに過去最高を更新したという。医学の進歩で三大死因といわれている
ガン、心臓病、脳卒中の死者が減少傾向で、これらを完全に克服すれば寿命は
さらに10年は延び男性は90歳、女性は96歳になるだろうと書かれてあった。
まぁ目出度い話題だが、かつての長寿の鶴亀のめでたさは平均寿命50年時代に
80ぐらいまで生きれば端的にそれが珍しかったからでこれはすごいという事で
みなから祝福された。目出度がられる当人にしても昔の老人は充分にそれだけの
自覚があったからそれらしい振る舞いをしていたと昔を顧みてつくづく思う。
爺は尊大な翁として、婆は優しい姥として後進に範を垂れる存在で尊敬された。
しかし現代における老人は人口の五分の一にも達し、文明の急速なスピードで
世の中についていけず、置いてけぼりでは後進に敬われる老人は皆無に等しい。
大きな原因の一つに老いること自体を否定的に捉える時代風潮があると感じる。
確かに老人は頑固になる、小回りが効かない、歩んだ昔を大切にしようとする、
考えが古い、精力が失せる、美しくなくなる、人生の快楽を享受できない等々・・
風潮からいえば老人は敗北者なのだろうが若さの価値観と以前の経歴だけでは
世間と同化が出来ない。おまけに過去が立派な人ほど拘りが多すぎて自分を失う。
といって、ただ老いるだけでは無内容であり文字通りの敗北者になってしまうが
せめて粗大ゴミにならないように、特に男性は妻からの自立が必要になってくる。
掃除、洗濯、料理の一つも覚えよう。アイロンも自分でかけ、靴も自分で磨く!
こなした後は不良老人で楽しく生きよう。ダンディで、お洒落で、遊び好きで、
愉快に生き、話が面白く、色気のある粋人を目指す!谷崎潤一郎は恋愛小説の
傑作「鍵」を発表したのは71歳で「瘋癲老人日記」の作は76歳で書いている。
不良老人の面目躍如たるもの!これからは熟した人生の実をゆっくり味わいたい!