隠居の独り言(863)

日本史の最大の内乱と言えば戦国時代と幕末期に代表されるが分類の共通点は
三代で成立している事で、戦国時代は初代にあたる信長が全国統一に乗り出し
二代目の秀吉が後を継ぐも数々の失政を重ね三代目の家康が革命を完成させた。
対して幕末の初代は吉田松陰橋本左内の思想家が登場したが、忠実のあまり
国家権力から危険視され多くは刑死する。二代目にあたる晋作(伊勢谷友介
竜馬(福山雅治)慎之介(上川隆也)などの乱世の雄らは刑死こそ無くても
幕末の闘争の乱刃のなかで結果的に非業の死に斃れて志を全う出来なかった。
三代目は伊藤博文、山形有朋、岩崎弥太郎等の運にも恵まれ生き残った人達で
初代、二代がやり残した仕事のかたちをまとめ結果的に保守的な権力者になる。
幕末維新の発火点は幕府の将軍、大名、武士たちが300年近くも無為徒食して
威張りちらしてきた古い政治体制が黒船の来航でアメリカの民主主義を知って
発奮し志士達が命を賭して行動したが彼らの夢から遥か遠い結果になってしまう。
残念ながら歴史は秀でた人物を若くして抹殺し俗物を権力の座にのさばらせた。
「高楼傾け尽くす三杯の酒 天下の英雄眼中にあり 酔うて枕する美女の膝
覚めては握る堂々たる天下の権」は伊藤博文の高慢な詩だが史実はやるせない。
ドラマ「竜馬伝」は、大政奉還論を山内容堂近藤正臣)に提案するために
後藤象二郎青木崇高)と竜馬は京に向かうが、幕府崩壊後の道筋の案を書く。
京では討幕派の動きへの対策のため四候の薩摩・島津久光宇和島伊達宗城
土佐・山内容堂、越前・松平春嶽を京に呼び寄せ会議を開催したが、なかでも
薩摩藩は既に薩長同盟を結び公武合体から倒幕に方針転換していたので他藩を
説いて幕府の執政を追及する始末、15代将軍・徳川慶喜田中哲司)と同様に
振り回された容堂は怒って土佐に帰ってしまう。