隠居の独り言(865)

趣味はラテン音楽を歌う事だがその歌詞のテーマの殆どが恋に関するもので
年齢に関係なく歌えば心が弾んで脳の活性化にも良いと一人合点をしている。
メキシコの歌にソラメンテ ウナ ベス(Solamente una vez)の名曲がある。
内容は「私の人生で、ただ一度だけ、あなたに恋をした、ただ一度だけ」で
ラテン屈指の作曲家アグスティン ララの名作だが、素敵な歌詞とは裏腹に
ララは70年の生涯のなかで結婚・離婚を何度も繰り返している。といって
その辺りがラテン気質というもので、情熱があって結ばれ愛情が無くなれば
別れてしまう陽気な人生観は日本人に理解し難い面もあるが見方を変えれば
しがらみに固執して耐える生活より、別な人との道を模索する彼らのほうが
よほど人間的といえる。だからラテンの恋歌はご挨拶程度のものなのだろう。
俗な言葉に「ころし文句」というのがあって男女の間柄ではもちろんのこと
夫婦、親子、友人間で親しみの言葉は必要と思うが日本の男は昔からの習慣で
不器用というか、負け惜しみが強いというか、女性を褒めるのは男にとって
沽券に関わると思っているのか、特に女房に対しては心の中で思っていても
決して口に出さないのが夫たる威厳だと勘違いしているのが日本の男性像だ。
その点、欧米とくにラテン系の男性は実にサラリと何気なく口にするという。
女として、それがころし文句と分かっていても悪い気持ちはするはずないが
慣れていない日本の女性が海外旅行で時々口説き文句に騙され泣きをみる。
とにかくラテン音楽は「ころし文句の恋の歌」で歌うことで若い心を保てる。
「秋風にかきなす琴のこえにさへ はかなく人の恋しかるらむ」  古今集
古今東西 老若男女 恋にまつわる人間の生涯の本性は絶えることはない。