隠居の独り言(876)

毎週、日曜日の夜8時にTV桟敷で楽しんだ「竜馬伝」もいよいよ最終回で
京都近江屋で竜馬(福山雅治)は中岡晋太郎(上川隆也)と話し合いの最中
何者か(市川亀治郎)数人に襲われて遂に命を落してしまう。その何者かは
未だ判明せず未来永劫に迷宮入りだろう。大河の筋書きは幕府を消滅させた
竜馬を恨んで幕府直属の見廻組説を取っているが、薩長も怪しいのは竜馬が
徳川家を存続させる立場に転じていたので幕府討伐を目指す薩長には政敵で
竜馬は排除すべき人物、土佐藩後藤象二郎青木崇高)にとっても竜馬が
いなくなれば大政奉還の手柄を独占できる。紀州藩はいろは丸事件で竜馬に
莫大な賠償金を払わされた遺恨は深いものだった。当時の言い伝えによると
将軍徳川慶喜が「坂本竜馬は生かしておくべし」の言は、あまねく各方面に
伝達されていなかったのだろうか。暗殺された11月15日は奇しくも竜馬
33歳の誕生日で当夜の京都の町の天候は底冷えのする寒い夜だったという。
竜馬は前日に風邪を引いて近江屋の隠れ潜んでいた土蔵の中ではあまりに
冷たく暖をとるために母屋に移ったために暗殺の非業に襲われてしまう。
歴史は偶然の積み重ねだが日本史を大きく変えた坂本竜馬暗殺について
司馬遼太郎は「竜馬がゆく」のあとがきで「坂本竜馬は維新史の奇跡で
彼の型破りは幕末維新に生きた幾千人の志士たちの中で一人も類例がない。
日本史が竜馬を持ったことは、それ自体が奇跡であった。なぜなら天が
この竜馬を恵まなかったならば歴史は大きく変わっていたのではないか」
司馬さんでなくても退廃した19世紀の幕府末期に於いてヨーロッパ列強の
餌食にならなかった要因は竜馬の役割も大きいが、徳川慶喜大政奉還
決心したのも天の配剤だし、命を懸けた彼らの英知に感謝してもし切れない。
語りきれないほどの幕末の日本人の沸騰があって、やがて明治の夜明けを
迎えていく過程は日本史の中でも飛びぬけた躍動感に溢れた宝物のようだ。
今の閉塞感の日本の中で坂本竜馬の一人はいないものか?考えさせられる。
最後に今年の大河のキャスティング考は、とくに男優たちが良かったと思う。
主役・竜馬の福山雅治を始め、弥太郎の香川照之武市半平太の大森南萌、
八平の児玉清山内容堂近藤正臣後藤象二郎青木崇高、以蔵の佐藤健
饅頭屋の大泉洋、そして女優では真木よう子の龍、蒼井優の元が印象に残る。
テーマ音楽も良かったし映像に流れる土埃や背景など時代考証も最高だった!
ここ数年の大河の中でも秀作だったと感じている。一年間のブログのネタを
提供して頂いたことに感謝し、スタッフ一同の皆様に礼を述べたい。