隠居の独り言(878)

歌舞伎俳優・市川海老蔵が公演を前にして、こともあろうに深夜の飲み屋で
見ず知らずの男と喧嘩をして顔面に重傷を負ったという。呆れて言葉が無い。
先だって世間の幸せを独り占めしたような小林真央との結婚披露宴を見ても
新郎の初々しさはまるで無く宴席の二日酔いの目つきにファンは落胆したが
歌舞伎披露の記者会見や友人達との会合を体調不良の理由でキャンセルして
飲み屋に行って事件にあったというから言い訳の無い酒乱というべきだろう。
役者は顔が最大の売り物なのに売り物を粗末にする役者は役者の資格がない。
しかも新婚生活の最初から美しい花嫁を深夜に置き去りにするのも常識から
かけ離れた異常な行動だが、真央もこれからの長い人生を考えたほうがいい。
そもそも歌舞伎界は世襲制で生まれた日からスターの座が用意されているが
自分は特別な人間という驕りが生まれる。役の修行と人間の修行との違いを
知らないで育つのは世襲の欠点と思うが身に沁みる痛みを教訓にして欲しい。
江戸期から続いている歌舞伎の世襲だが同じ世襲でも商家はそうはいかない。
見落とされているが江戸期の商家に生まれた息子の大半は跡を継げなかった。
今に続く三井、高島屋、住友など数百年の歴史を誇る老舗は娘に優秀な婿を
取るのが習わしで商家の婿は年季奉公の丁稚の中から商才に長け礼儀を知る
人物だけが選ばれたエリートの公職であった。例えば三井別家(暖簾分け)で
男子相続で店を治めたのは2割強でしかなかった。つまり商家を継ぐことは
私事より公事であり老舗を守る責務は重いものであった。娘の結婚の是非も
親を含め商家を取り巻く株仲間や取引先の同業者の議決が必要だったという。
歌舞伎も贔屓あっての稼業で世襲制を考え直す今回の事件ではなかったか?
そして政治家にも言えることと思う。