隠居の独り言(903)

日本制覇を目前にして非業の死を遂げた織田信長(豊川悦司)の悔しさは想像を
絶するものだ。後人の信長への評価は分かれるにしても徹底した彼の無神論
実践はそれまでの歴史上の人物には無かったもので現代にも影響を残している。
比叡山焼き討ちや一向一揆の根絶などの宗教的な要因の戦争は理由がどうあれ
殺戮は絶対正当化出来ないという歴史学者は多いが、戦国時代は殺さなければ
殺される時代で、信長の宗教戦争あるいは宗教テロの根絶であったといえる。
日本史を大きく見れば信長の果たした役割はそれまで宗教の対立による戦争や
宗派が自分たちの政治的主張を全うしようとして人を殺すテロ行為を根絶して
江戸時代以降、先のオウム事件以外は起きていないのは日本史の素晴らしさだ。
後に天下を制した秀吉や家康はキリスト教への嫌悪感で弾圧し、江戸時代には
鎖国まで発展して日本を大きく歪めたが、信長の無神論は政治と宗教の区別を
はっきりとさせた画期的なもので彼を高く評価したいと思う。クーデターで
一時的に光秀(市村正親)の天下になっても公家政治や宗教観を元に戻す策略は
信長の戦略には遥か及ばず僅か半月の政権は秀吉(岸谷五朗)に取られてしまう。
世界的に見ても今なお宗教戦争が絶えないのは指導者の宗教や思想の中立性が
無いからで相容れない宗教観の対立がいかに平和を乱すかを考えさせられる。
アメリカの大統領が就任宣誓のときに聖書に手をしているうちは世界に平和は
やってこないし、米国民の2億丁ともいわれる拳銃所持は人間の持つ愚かさで
当時の信長の無神論、秀吉の刀狩など多くの世界人に日本を知ってもらいたい。
話しがそれた。ドラマは江(上野樹里)が家康(北大路欣也)と命がけの伊賀越の末
伊勢に到着するが野武士に捕らわれてしまう。一方、明智光秀は孤立無援だった。
最大の誤算は秀吉が備中から一日半で姫路に到達し「中国大返し」とよばれる
離れ業で光秀の体制は整える時間も無く、あえなく「三日天下」で滅びてしまう。