隠居の独り言(905)

今年で100歳を迎える柴田トヨさんの詩集「くじけないで」が100万部の
大ベストセラーになっているという。詩集に寄せられた読者たちの感想は
「自然な日常、何でもない毎日の大切さ!まるで著者が自分の母や祖母で
あるかのように錯覚するほど親しみを覚えます」「生きる勇気をもらった!
何を始めるにも年など関係ないと改めて感じました」「いくら歳を取っても
決して老いや寂しさにくじけず、しっかり踏ん張って新鮮に生きることが
ほんとうにカッコよく素晴らしいと思いました」との思いが綴られていた。
一世紀を過ごした柴田トヨさんの思いを寄せる愛情とは何だろうと考える。
思うに愛情とは日頃の日常茶飯事的なことで相手に対して理解する唯一の
心持ちだと思う。かつて家族は間違いなく大きな愛情に包まれていたのは
父母に阿吽の情があり無条件の信頼のもとで家族に赤い糸の連携があった。
それは空気のようで目に見えなくても相手を気遣うことだが現代の世相は
愛情が空虚な風船のように簡単に壊れて自己の世界に嵌っている人が多い。
核家族少子高齢化の影響で所帯は増えても家族の人数が減り親子兄弟が
疎遠になっていく風潮は淋しいが今だからこそ愛情に努力が必要と感じる。
愛情のひとつに相手の言葉をきちんと聞く誠意と忘れない記憶力も必要で
何気なくさりげない話の中にそれに応える自然な語り口も愛情ではないか。
愛することは簡単でない。細やかな神経と行動が伴わないと心が通じない。
分類上では自分は老人だが老いてますます盛んとは情を伝えることと思う。
やがて枯れて朽ちるのは神との約束だが、残された時間を有効に使いたい。