隠居の独り言(909)

4歳の孫にカルタを教えたが幼児は言葉をすぐに覚えるので爺はいつも負ける。
日本文化の一つに「いろはかるた」があり最近は各所で展示が行われているが
深川にある図書館に「東西いろはかるた対照」というのがあって展示を見ると
先人の知恵に改めて感じ入る。いろはカルタの文言は様々で教育的な文言から
各地の名所や訛り言葉など・・・でもやはり流れるような諺文の犬棒かるたが面白い。
江戸と京都では同じ歌留多でも発想や感性が違って文化の背景の勉強にもなる。
まず江戸は「犬も歩けば棒に当たる」「論より証拠」「花より団子」「憎まれっ子
世に憚る」「骨折り損のくたびれ儲け」「下手の横好き」「年寄りの冷や水」「塵も
積もれば山となる」「理屈と膏薬はどこへでも付く」「盗人の昼寝」「類は友を呼ぶ」
「鬼に金棒」「笑う門に福来たる」「可愛い子に旅をさせ」「宵っ張りの朝寝坊」・後略
京都は「一寸先は闇」「論語読みの論語知らず」「針の穴から天を覗く」「二階から目薬」
「仏の顔も三度」「下手の長談義」「豆腐に鎹」「地獄の沙汰も金次第」「綸言汗の如し」
「糠に釘」「類を以て集まる」「鬼も十八」「破れ鍋に綴じ蓋」「蛙の面に水」「夜目遠目
笠の内」「立て板に水」「連木で腹を切る」「袖擦りあうも他生の縁」「猫に小判」・後略
花のお江戸と王朝文化の京洛は遊びの言葉にも歴史の違いを垣間見る思いで興味深い。
孫は言葉の意味も分からずゲーム感覚で遊んでいるが調子のいい格言の言葉遣いは
幼児の記憶の芯まで沁みついて記憶の体験は一生ものだと思う。「楽あれば苦あり」
「安物買いの銭失い」「人のふり見てわがふり直せ」「塵も積もれば山となる」孫たちが
先人の残した言葉の知恵に思い当たるときは失敗だらけの青春に入ってからだろう。
覚えていてよかった!と感じたときは、昔の爺を思い出してほしい。