隠居の独り言(921)

最近の大河ドラマ「江」は観るのも辛いほど歴史考証がなっていないと考える。
最大の原因はキャステングと、ありえないストーリーが観るものを白けさせる。
まず三姉妹の年齢だが、安土滞在当時は茶々(宮沢りえ)が14歳、初は13歳、
江(上野樹里)は10歳で、考えれば子供同然でそれぞれ女優のイメージでない。
秀吉や政所のねねが、わざわざ安土の三姉妹を訪ねることはありえないし、また
三姉妹が例え織田家の娘といえ今や天下人・秀吉に「猿呼ばわり」は抱腹させる。
信長(豊川悦司)の死後に書かれた「信長公記」にも秀吉の「猿」の蔑称の事は
一切書かれていないし徳川時代に入って付けられた秀吉蔑視の歴史改ざんだろう。
大河ドラマはある程度の日本史の逸話なのであまり現代風にするのは考えものだ。
自分は関西生まれのせいか所謂「太閤ひいき」で秀吉にとても好感を持っている。
とくに天下を取るまでの秀吉が好きで卑賤の身から天下人までの苦労と処世術は
日本史の英雄の中でも最も人間味があり他人の功利性まで暖かく見る目を持った。
たとえば城攻めにしても主人の信長は火攻めで敵を徹底的に殺戮したが、秀吉は
水攻めや食料攻めで敵の人命を損なわず外交で敵を倒したのも彼の人間性だった。
北ノ庄落城の際も本来なら柴田勝家・市と共に三姉妹の命は無かったはずなのに
秀吉に助けてもらい、そのうえ別格の待遇を受けていたのをドラマは伝えない。
織田家を根絶やしにしたい秀吉の戦略なら三姉妹を生かしておく説明が足りない。
秀吉の晩年はひどかったが、それは後のことで今のドラマに登場する時期の彼は
政治感覚や時代感のあった時であり最も魅力的な秀吉像なのに、まるで粗忽者に
扱われているのには秀吉への人間的改ざんであり名誉棄損に当たるのではないか。
晩年の秀吉はひどいものになっていたが華やかな時代にもっと光を当てて欲しい。
今の大河の視聴率低下も時代考証に影響しているのではないか、そんな気がする。