隠居の独り言(930)

9.11事件の首謀者とされるビンラーディンがアメリカ軍によって遂に射殺された。
ビンラーディンはサウジアラビアの富豪の息子で過激なイスラム武装勢力を組織し
9,11の世界貿易センター爆破事件など世界各地で一般市民をも巻き込んだ無差別な
爆弾テロを行ったが無謀な彼の原理主義で何人もの犠牲者を生んだか計り知れない。
一人の指導者の考えが多くの人の運命を変えるのは宗教と組織の恐ろしさであるし
指導者の自分勝手で自己中心的な騙しに気付かないのは狂信してしまった悲劇だろう。
かたやサウジアラビアで15年間も脳外科医として働いた人間がいる。いろんな病院に
請われて度々脳外科手術のメスを握っていた。ところがこの男の学歴は小学校だけで
いわゆるニセ医者だった。数年前に中東の有力紙が報じた話だが、その報道によれば
「行った手術はすべて成功だった」というので二度驚いた覚えがある。医師の免許を
持たないニセ医者だったとのケースは時々あるが、この男の場合のように評判が良く
患者に頼りにされた“名医”だったというからとても器用な職人肌だったのだろう。
サウジアラビア出身のビンラーディンとニセ医者の共通点は人々を騙したことだが
私たちが人を信じる事の難しさをつくづくと感じさせられる。オバマ大統領だって
殺害作戦を実施するにあたって報道陣から目をそらすために午前はゴルフを楽しみ
ゴルフウエアーのままリアルタイムで作戦を観察していたというから一種の騙しだ。
考えれば人間は騙し騙され人類は発展してきた。戦争だって政治だって経済だって
或いは男と女の間柄も、うまく騙した方が栄えるのは古今東西歴史が証明している。
力が正義と強調するアメリカと復讐の連鎖で対抗するテロリストの戦いは、当分は
収まりそうにないが、後世の人たちはどちらに軍配を上げるのかそれは分からない。