隠居の独り言(937)

日曜日の夜8時になると習慣的に、大河ドラマ「江」のスイッチを点けるが
今風のメロドラマのような作品は白けてしまって面白くない。三姉妹たちの
恋愛物語は今の時代なら普通に見ていられるが大河ドラマと位置付けならば
その時代に合った歴史考証を見せてもらいたいものだ。茶々(宮沢りえ)と
秀吉(岸谷五朗)の場合もここまでこじれては将来の淀君に結びつかないし
初(水川あさみ)と高次(斉藤工)も女の一方的な恋心は当時はありえない。
江(上野樹里)と秀勝(AKIRA)も秀吉嫌いが秀吉の甥と恋愛とは考えにくい。
いうまでもなく武家社会や封建制度にあっては結婚問題はお家の大事であり
場合によっては「家」そのものの浮沈に関わり個人の恋愛感情は許されない。
劇中、茶々が秀吉を平手打ちするシーンがあったが大阪城の中ではあり得ず
あったとすれば警備の小姓は切腹ものだし武家制度では茶々は打ち首だろう。
無論、歴史小説の大半は作家のフィクションでありその巧妙な手口が作家の
器量であるのは百も承知だが今回の作家の田淵久美子の人生観の写しだろう。
それは人間だから相手への好みや心動かされる事情があったにせよ「家」は
個人だけの物でなく多くの家来や領民たちの生活にも関わるものであるから
大名の結婚相手は慎重にならざるを得ない。ましてや天下人の実力を備えた
秀吉の威光と計略に逆らう者は上は天皇から下は庶民までいなかったはずだ。
茶々は子供のいない秀吉に自ら擦り寄ったに違いなく初は位の高い京極家に
取り入り江は秀吉の実質上の養子に嫁いだのだろう。そのストーリーが最も
自然で分かり易いと思う。三姉妹は多分、秀吉の妻・おね(大竹しのぶ)が
取り仕切ったと想像するのが成り行きだろう。安土桃山時代の絢爛な様子と
権力者の生きざま、女たちの生き方、日本史の中で最も国が栄え濃厚だった
16世紀後半の姿をありのままに伝えて欲しい。大河ファンの切な願いだ。