隠居の独り言(953)

報道によれば映画監督の鈴木清順(88)が48歳年下の女性と再婚していたという。
清順監督は映画「ツィゴイネルワイゼン」「夢二」などの作品で知られる巨匠で
NHK元アナウンサー鈴木健二の兄者なのは周知の通りだがそれにしても驚いた。
野次馬が読むと知り合ったのは5年ほど前だそうで女性は映画やDVDの編集者で
清順監督のファンで映画にはとても造詣が深く知り合ってすぐ意気投合したという。
現在の監督は車椅子で生活しており持病の肺気腫のため常に酸素ポンプを装着して
「一人暮らしは危険で世話をしてくれる奥さんができたのは有難いこと」と話した。
今年4月に東京・上野で行われた清順監督の米寿を祝う会でも女性が甲斐々々しく
身の回りの世話をしていたという。とにかく目出度い話題だが清順監督ならではの
88歳でなおかつ女性に魅力を感じさせ結婚する見事さは立派としか言いようがない。
監督はもちろんだが女性の勇気と意思に素直に拍手を送りたい。でも普通に考えて
超高齢者の結婚というのは生物学的にも無理な事だし世間のしがらみや葛藤がある。
あまのじゃく的見方をすれば男性は世話を期待し女性は財力を期待するのだろうか。
「夫婦とは互いに性の対象から遠のいた後に本物の愛が始まる」の格言があるが
この再婚は枯れた愛そのものなのだろう。結婚の定義は無いけれど夫婦が愛し合い
子を儲けて喜怒哀楽の家族のスタートが世帯のイメージなのに何か違和感を覚える。
もちろん結婚の形も愛の姿も千差万別だ。とくに日本では老いてからの性について
みっともない、醜いものと受け取られてきた。老人ホームなどで男性が女性介護士
お尻を触って叱られるのは理性の喪失だが、老いてこそ艶やかな好奇心を持ちたい。
人は何歳まで恋をするのか?人以外の殆どの動物は繁殖期が終わると急速に衰えて
死を迎えるのが定めなのに人だけがその後も長く生きて、かつ異性を求める心理は
生殖とは切り離された最も人間的な純愛といえるのではないか?監督ならではの
老人の指針であって欲しいし長寿社会万々歳の象徴といえる。清順監督おめでとう!