隠居の独り言(954)

「嵐」相葉雅紀が「自然気胸」で入院すると所属のジャニーズ事務所が発表した。
同じジャニーズの内博貴も患ったことがあるし、俳優の佐藤健や歌手の前川清など
著名人もけっこう多い。この病気は肺臓を包む肋膜に何かの原因で空気が流れ込み
肺を圧迫して呼吸が困難になり苦しくなる症状だが突然に襲ってくるので厄介だ。
病院に行くと胸から注射針を刺して肋膜の中の溜まった空気を抜く処置をするが
風船が抜けるように今までの苦しさは嘘のように消える。でも肺の外側の肋膜に
穴がどうして開いたのか?その肺の箇所と原因を調べてしっかり処理をしないと
再発の可能性が高いのが自然気胸の特徴といえる。この病気に罹患する人の多くは
若い男性で背が高くて痩せている体型が殆どというが少数だが女性も罹る人がいる。
検査をして他の病気がなければ一週間程度で治るのでそれほど怖くはないが、実は
自分も25歳の時に肺結核が原因でこの病気に罹り一年余りの入院を余儀なくされた。
中学を出て上京し小僧を勤めて10年一区切りの峠で病気を患うという情けなさは
東京で一旗揚げようと目論んだ夢と希望が徐々に消えていく悔しさが思い浮かぶ。
今は治療法が進んだが当時は仕事をしながら時々胸が苦しくなる度に病院で空気を
抜いてもらったが医師は安静が絶対必要ということで思い切って千葉の額田病院で
静養した。小高い丘にある病院の眼下の幕張の浜辺はまるで広重が描いた日本画
屏風絵で病んだ青年の心を癒すには勿体ないほどの風景は今も目に焼き付いている。
入院からの一年間は会社の好意で治療させて貰ったが時期的に不景気のせいもあり
退院後は自分の席は無かったが人生の崖ぶちは独り立ちの精神と実行しかなかった。
俗な言い方をすれば馬鹿力だったのだろう。無我夢中で夜も惜しんで仕事に没頭した。
もし自然気胸にならなければ今が無かっただろうし、会社を解雇されていなければ
零細企業の雇い人の道を歩んでいたかも知れない。或いは神が選んだ岐路だろうか。
ニュースの「自然気胸」を読み、若かった日々を想い人生の不思議をつくづく思う。