隠居の独り言(966)

大河ドラマ「江」は老醜を極みた晩年の秀吉(岸谷五朗)の物語を描いているが
そんな秀吉に仕える三成(荻原聖人)はどういう人物だったのか?秀吉が信長の
武将として近江長浜に城を築いた頃、領内で鷹狩の帰りに喉が渇いて小さな寺に
立ち寄った。あいにく住職は不在で一人の寺小姓の少年がいたが秀吉はいきなり
「茶を点じて参れ」と縁側に腰をおろしたが、少年は静かに奥で茶の支度をして
「粗茶でござりまする」と大きめの茶碗にぬるめの湯で差し出した。秀吉は喉が
乾ききっていたから「さらに一服」と少年に命じが、今度は湯をやや熱めにして
その量を最初の半分ぐらいにした。秀吉は飲みほし三杯目を所望すると三度目は
容器も小茶碗で湯量も僅かで舌の焼けるほどだった。秀吉は少年の頓知に感心し
和尚に頼んで家来にした。秀吉の目に狂いなく三成が持つ計算能力、行政感覚の
才能は目を瞠るものがあり、そのうえ秀吉への忠誠心が人一倍強く信頼されたが
性格が真っ当過ぎて細かかったため同僚から誤解されて敵が多かったのは事実で
主君秀吉死後の豊臣跡目相続では三成の実直な潔癖性が裏目に出て狡猾な家康に
うまく利用され滅んでいく。つまるところ三成に百の才があっても人の情を掴む
徳が無ければ才が全て徒労に化す。老いていく秀吉の後の天下を虎視眈々と狙う
家康は若い頃からの並々ならぬ苦労で得た人心掌握はこれからが本領発起だろう。
ドラマは、江(上野樹里)は秀忠(向井理)に嫁げという秀吉の命令を拒み続けていた。
一方の秀忠は父・家康(北大路欣也)に「私の人生は父上の意のまま」と言い放って
まるで他人事のように婚儀を受け入れる。勝手に婚儀の準備をされ困る江の心・・
家康はそんな江を訪ねて「ぜひ徳川家に嫁に来ていただきたい」と頭を下げる。
家康じきじきの申し出に、江は思案の末、婚儀を受ける。