隠居の独り言(971)

昼食に近所のコンビニで冷やし中華を買ってきて食べた。値段は320円で本体の
冷麺からチャーシュウ、キュウリ、モヤシ、ゆで卵の半分、紅ショウガ、カラシ、
割り箸まで必要品目一式全部揃っている。何とも便利な世の中になったものだが
箸を取ろうとして考えた。この瞬間にも日本のどこかでキュウリを刻む人たちが
作業しているだろうし、チャーシュー刻みの工場があり、紅ショウガ加工会社が
汗を流し、どこかでは何万、何十万個のゆで卵が半分に切られていることだろう。
もちろん主体の麺を作る会社は材料を海外から輸入して手広くやっているはずだ。
麺つゆのダシはどこでどのように味付られたのか?想像を巡らせればきりがない。
容器のプラスチックも麺と具は二段重ねで、しかも様々な具が混ざらないように
所定の場所にクボミがついている。この容器にも随分と工夫のあとが読み取れる。
こうしてあちこちから原材料を買い集めて冷やし中華にするコンビニの担当者も
こんなに安く販売できるのだから彼は相当の腕前なのだろう。更に考えてみると
キュウリだってモヤシだって加工品になっている以上は国産であるかは疑わしい。
日本の食糧自給率は4割に達しないというから産地の元を質せば6割が外国産だ。
ゆで卵だって巨大養鶏場の中でひたすら卵を生産する以外に何の生きがいも無い
ニワトリの苦難の結晶ではないか。このように考えていくと、たかがコンビニの
冷やし中華と軽視してはならない。そのなかには世界中の何百何千の加工業者が
手を加え販売し、金融関係や輸入に関わった人々までも考えると全地球的規模の
壮大な経済地図が凝縮された作品の一つといえる。しかも最近のデフレや円高
冷やし中華の値段も下って消費者にはとても有難いが国内の加工下請け業者では
取引先から値下げの通告を受ける。大きな会社は安い人件費を求め海外へ工場を
移転することができるが多くの零細企業は薄利に喘ぎ失業者も増えることだろう。
日本の産業空洞化は待ったが無い!冷やし中華を食べながら日本の将来を憂う。