隠居の独り言(976)

歳のせいか、いや歳のせいにしてはいけない。最近は物忘れが多くなってきた。
とくに人の名前や行ったところの地名が咄嗟に出てこない。家の中で話す時に
「ほらほら、あの人だよ、あそこだよ」と言いつつ思い出そうとするが、結局
思い出さないままに終わってしまう。小説を読むときだって推理小説なら大体
犯人と被害者と探偵の三人の構成で出来ているので三人を覚えていればいいが
そこに脇役が出てくるから話が複雑になり周辺の事柄が分からなくなり最近は
シンプルなストーリーの本を読むことにしている。昔を振り返るとスラスラと
記憶できたのは小学から中学までの十代の頃で学校で習った歴史の年表や唱歌
人名、地名,数学・・さらには講談や浪花節が好きだったので剣豪、遊侠物語
なんでも覚えた。教育勅語軍人勅諭も幼児期の記憶は今でも薄ら覚えている。
それは今風に言えば「記憶容量」というのがあって大きなディスクの頭の中は
ガラガラだったのだろう。あれからウン十年も生きて年寄りの域にまでなれば
記憶容量も一杯になって何かを捨てないと新しいものの入る余地が無くなる。
でも、どうでもいい浪花節のセリフなどを今でも覚えているのに大人になって
学習した古今東西の先哲の残した名言の殆どを忘れるのはボケの始まりか?
しかしこれが一連のボケの症状というなら自分は若い時から兆候が表れている。
電車の中など傘や本を忘れるのは日常で老眼鏡を掛けながら眼鏡を探すことも
同居人から軽蔑される一因となっている。丁度、そんなことを思っているとき
定期検査でMRIという検査を受けたが数日後にその結果を伺ったら医者から
脳梗塞脳卒中の兆候はゼロですよと告げられ安心したが記憶力とは関係ない。
ちなみに記憶には短期と長期があって数学などは短期、国語などは長期だろう。
まぁいろいろなことを経験して覚えてまた忘れる。人生はこれでいいのだろう。
人生を楽しむ一番のコツはこれだと一人合点している。