隠居の独り言(988)

最近の男は弱くなったものだ。特に歳を重ねてからの衰えの加速度は目に余る。
男の衰えに反して高年女性の元気なことよ!何故男は弱くなってしまったのか?
何千年も昔には外敵から家族を守るためには体が大きくて強い男が必要であり
時代が過ぎて国家の戦争も男は大切な存在であった。当然に男社会になったが
今や外敵も少なくなり男の仕事も営業や計算など折角の強い場面が無くなった。
事務的な仕事なら男も女もない。それに輪をかけて男女雇用均等法が施行され
男の自尊心が損なわれ自信も失った。現役で働いた時の男は一応お金を稼いで
妻子を養う自負があったが定年で家庭に入ると今まで気付かなかった事が多い。
まず家事は不得手で何もできない、箪笥の中に何が入っているのか分からない、
近所付き合いの挨拶もできない、家計は疎くて生活費諸々の経費が分からない、
毎日サンデーの生活は妻との会話も無くなる、等々、残念ながら男には変化に
対応する順応性が欠けているのが特性だが歳を重ねる度にますます頑固になり
人の意見にも耳を貸さなくなり保守的で権威主義の塊で威張る年寄りが多い。
俗な言葉に釣った魚には餌をやらない、というのがあるが程度の差はあれ男の
本性を言い当てている。多くの男は恋愛時代には相手の心を惹きつけるために
誠心誠意女性に尽くすが結婚で共に暮らし馴染むにつけ熱かった愛の炎は鎮まり
男の心は安心して手抜きがますます大きくなっていく。女のほうだって始めは
見せなかった素顔を露わにダラシナイ恰好や反抗的な態度を平気で晒すように
変化していく。時間の経過のマンネリは仕方ないが緊張感や愛のボルテージも
徐々に失われていくのも熟年夫婦というものだろう。でも只一度の人生行路で
今の相手を神様が縁を取りもってくださった以上は仲良く暮らすための努力を
惜しんでは折角の人生が損をする。長年暮らした夫婦に最も大切なのは会話で
ごく気軽にさりげなく言葉を交わすのが相手を癒し安心させる。それが夫婦間の
潤滑油になり男の家事等の眠っている能力を引き出すことにもなるのではないか。
妻に気遣いするのは、ひいては男の老後対策の一環でもある。