隠居の独り言(1001)

大河ドラマ「江」は終わったが浅井三姉妹の波乱万丈を描いた田淵久美子の作品は
ここ数年の大河ドラマの中でまずまずの及第点としよう。筋書きには不満が残るが
今までの大河の中でキャスティングが歴史上の人物のイメージに近い役者を選んだ
形跡が見られるので安心して観賞できた。以前2000年の大河「葵・徳川三代」で
小川真由美淀君を演じていたが当時の小川は60歳で、初の波乃久里子は55歳、
江の岩下志麻は59歳だった。これは相当のショックだったが、その後2003年の
「武蔵」で何と70歳の若尾文子淀君には驚いた。今回の宮沢りえは38歳だが
秀吉亡き後の年齢には合っているが茶々の少女時代からを演ずるのには無理がある。
それは初の水川あさみ、江の上野樹里にもいえるが、大河という長期間を扱う場合
一人の役者が全生涯を演ずるのは無理で、或る時期を区切って役者を変えないと
歴史ドラマは人物に対するイメージがあるから製作者はその辺りを考えて欲しい。
年齢にも拘るが人間的な歴史的評価も三姉妹で淀君は驕慢、権高のイメージがあり
江は秀忠を恐妻家として描く必要があるので優しい魅力的な女優では説得力が無い。
一方の男役では歴史上のイメージの固まっている人物は信長だが今回の豊川悦司
史料等から窺われる信長像からしてまずまずの合格点だろう。秀吉は小柄な体格の
猿面のイメージだが今回の岸谷五朗はイマイチで以前の大河の武田鉄矢香川照之
日野正平などはそれなりの秀吉だった。難しいのは家康で東照神君の神と崇められ
最近では経営者としての才能を高く評価される一方で狡知に満ちた悪玉の狸親父の
イメージが払拭されない。肖像画を見ると下膨れのふっくらした顔つきが定番だが
今回の北大路欣也も家康役には物足りない。独断と偏見で評価を言わせてもらえば
イメージに合っていたのは秀忠の向井理、竹千代の水原光太、本田正信の草刈正雄
秀頼の太賀、北の政所の大竹しのぶ、利休の石坂浩二柴田勝家大地康雄など・・
不満を言わせてもらえば春日局富田靖子、市の鈴木保奈美、千の芦田愛菜など・・
たかがキャスティングと侮るなかれ、「篤姫」の宮崎あおい、「天地人」の妻夫木聡
「竜馬伝」の福山雅治など「はまり役」に当たると一年の視聴率はトップを走った。
さて来年の「清盛」の松山ケンイチはどうなるのか?楽しみにしている。ともかく
今年の大河も色々と勉強させて頂いた。歴史的考証での田淵久美子の脚本の評価は
意見が分かれるところだが自らの考えを表現出来たのは作家冥利に尽きるだろう。
隠居の勝手な批評を許していただきたい。大河に携わった皆さま、ありがとう!!