隠居の独り言(1027)

新聞報道によれば前代未聞の夫婦喧嘩は平成9年5月、東京の首都高速道路を走る
車の中で起こった。ホイットニー・ヒューストンの夫で歌手のボビー・ブラウンが、
怒りに任せて妻から贈られたエメラルドの結婚指輪を車の窓から投げ捨てたという。
50万ドル、当時のレートで5800万円もする指輪だった。ホイットニーがホテルから
抜け出して夜遊びをしていた6歳年下の夫を連れ帰る途中の出来事だった。6度目の
日本ツアーで何度もブラウンと仲の良さをアピールしていただけにファンは驚いた。
そのホイットニーの訃報がロサンゼルスから届いた。48歳という人生の途中なのに・・
6回も受賞している米音楽界最高の栄誉グラミー賞の授賞式の前日だったというから
何とも痛ましい。ホイットニーは世界で最も売れている歌手の1人で累計セールスの
アルバムは1億4,000万枚以上、シングルCDの5,000万枚以上と、驚異的な数字だが
そのうえ彼女は天性の美貌と歌唱力で世界の歌姫と称され音楽界の絶賛の的になった。
でも人生は分らない。そのホイットニーの人気の絶頂は結婚によって一気に地獄の淵に
堕ちていく。人生の幸不幸は出会いで決まるがブラウンという男に惚れてしまったのが
ホイットニーの運命を悲しいものにする。ほどなくしてブラウンの度重なる彼女への
暴力行為や大麻所持による逮捕劇を繰り返し、彼女もコカインや大麻の使用、さらには
セックス依存症に至るまでの経緯を一部のインタビューで認め、歌手としてのヒットは、
ほぼ皆無という状態に陥ってしまう。ホイットニーの悲劇はブラウンへの一途が過ぎた
女性の性格によるものだろう。男に溺れた彼女の弱さが悲しい。男と女が恋を始める。
そりゃ最後まで愛が変わらないことに越したことはないが途中でどちらかが嫌になる
ことだってあるはずだ。それは互いのワガママでなく、よくいえば進歩かも知れない。
男と女は最初の頃の新鮮さが無くなっていくのは当然で、だからいつも心を引き締め
新しいセンスを求めればベターだが、耐えられなければそこで、さよならを言えばいい。
相手は怒る、泣訴する、死ぬと脅かす。ホイットニーはその時点で別れればよかった。
愛のある別れは辛いが、別れを別れと見極めることが、人を成長させるのではないか?
誰にも相談できなかったのだろうか?ファンだっただけに彼女の突然の訃報は悲しすぎる。
ホイットニーは愛に破れたというより薄汚く人生に破れた。それは他人事と思えない。