隠居の独り言(1044)

歳月の流れるのは残酷だ。長く生きていると否が応でも歳相応に体恰好が醜くなる。
我が家には孫が5人いるが赤子の肌はつるつるツヤツヤ、シミ一つ無く幼児期とは
こういうものなのか、改めて見惚れてしまう。幼い頃の小さな身のこなしの様子は
自然になんなく動いている。育つ段階とは筋肉や骨格が自然に成長するからだろう。
べつに運動のせいでなくホルモンの働きはあらゆる筋肉質を働かせることによって
更に筋肉が発達していく。男の十代は背中と両腕に重いものを持ち上げる僧帽筋
発達して逆三角形の上半身ができる。人間の生涯のなかで最も華やいでいる年頃だ。
悲しいかな、それが年齢と共に衰えるのが歳月の辛さで中高年になると筋肉は衰え
その割に食欲が衰えないから脂肪は腹を膨らませ尻は垂れ下がる。女も乙女の頃の
素晴らしい楽器のような曲線のウエストも余計な脂肪の受け付け場所になっていく。
さらに老いると歩きかたも体のバランスをとるため歩幅が小さくなり背中を丸めて
両手を後ろ手にして貧相に歩く。貧相に追い打ちをかけるよう体の皺も増えてくる。
顔の皺も眉間に縦模様や額に横模様が増えるのは人間を長く生きた証明のようだが
こうして老化現象は何とも防ぎようがない。でも老いは仕方なくも良いこともある。
過去の豊かな経験の薀蓄は若人に負けないし人を見る目の養われるのも付いてくる。
長い経験と知恵をインプットしたのだから今後は楽しくアウトプットを心掛けたい。
ロンドン五輪馬術代表に選ばれた71歳の法華津寛は「今も少しずつでも自分が
うまくなっていることが一番のモチベーション」と語ったが素晴らしい言葉と思う。
シミ一つ無かった赤子も長い年月を経ると今や無数のシミとキズだらけの年寄りで
人生の大半を同じ屋根の下で老夫婦と暮らしているが互いに裏も表も全てが見えて
あとは惰性が漂うばかり・・ヤマノカミは他人には外面だが家の内面では配偶者に
罵詈雑言限りのボケだのカバだの気が利かないと罵るがこちらは腹が立たないのは
感情のやり場として配偶者しかいないと理解するからで貴重なサンドバックになる。
これも長持ちと平和の知恵だが、夫婦といえ誰も違った遺伝子を持ち育った環境も
性格も違うので仕方ない。それを互い認め合うのも老い先短い夫婦のあり方だろう。
今は健康状態を維持しているが以後何回のBirthdayを迎えられるか神のみぞ知る。