隠居の独り言(1123)

今年のNHK大河ドラマ平清盛」も23日の最終回「遊びをせんとや生まれけむ」で
幕引きとなる。自分にとっての大河ドラマはライフスケジュールの一環で日曜8時の
楽しみになっているが平清盛は視聴率の低さが物語るように今一の大河ドラマだった。
そもそも平清盛は以前から道鏡足利尊氏と並んで歴史上の三悪人とされイメージから
このような人物をテーマに取りあげるのは製作者の相当な冒険と歴史観が必要だろう。
以前に放映された大河ドラマ「新・平家物語」では原作者が文豪・吉川英治、主役には
仲代達也が扮して平清盛のイメージを変えたほどの演出と迫力が満ち溢れた気がする。
歴史ドラマの場合は背景や人物のイメージをもって視聴するから、うまく嵌ったときと
外れたときの落差がすごく大きい。たとえば源義経の実物は色が白くて小男だったが
歌舞伎の世界で薄幸の美青年のイメージになる。平清盛は悪人だったにしても公家が
日本を支配していたのを武士政権に変えた程の大きな器量とカリスマがあったはずだ。
平清盛アンチヒーローとして描かれていた男に新しい光を当てた企画だったろうが
その辺りの感覚からいえば松山ケンイチは清盛イメージとしてスケールが今一だった。
でも平安期は約1000年も前の時代なので歴史的検証からして古い時代なのでドラマに
出てくる権力争いや、普段の暮らし向き、庶民の生活まで良くやったと思う。それらは
評判や視聴率と離れて、出来栄えは素晴らしいと感心することが多い大河ドラマだった。
今までの大河は歴史を知るうえでも魅力だったが、そろそろ曲がり角に来ていると思う。
最終回のストーリーは清盛が熱病で死の淵にいた。源氏との決戦で平家が連敗している
戦況を心痛の気持ちをもって平家が必ず勝ち頼朝(岡田将生)の首を墓前に供えよと
叫びながら清盛は世を去っていくが彼の心境はいかばかりだったか察するに余りある。
清盛の死後は平一門の運命は坂を転がるように暗転していく。死後2年後には北陸から
源義仲の大軍が京都を占領し、4年後は源義経神木隆之介)が義仲を京都から駆逐し、
その勢いで、一の谷、屋島の戦いを経て最後の壇ノ浦で安徳帝田中悠太)を抱いた
時子(深田恭子)は悔恨と涙で入水する。清盛に仕えた盛国(上川隆也)は捕虜となり
鎌倉で息絶える。そして頼朝(岡田将生)は義経を追討し一関を滅亡させ幕府を開く。
一代で名を成し、一代で滅んだ平清盛は日本の改革を急ぎ過ぎたようだ。彼の志した
国作りは過去の腐敗を駆逐し世界観を持って国家を変えようとしたが志半ばで没した。
そしてNHKに願いたいのは再度、原作者やキャステングを変えて平清盛に挑んでほしい。