隠居の独り言(1134)

歴史に登場する人物のなかには過ちを犯す人が多い。NHK大河ドラマ「八重の桜」の
4回目は「松陰の遺言」だが、安政の大獄に関わった井伊直弼榎木孝明)は、将軍の
継承問題と、勅許を得ないまま日米修好通商条約に調印して江戸幕府の国是というべき
鎖国政策を破った経緯で、反対する攘夷派や政敵への弾圧のやり方は熾烈を極めている。
弾圧された尊皇派や一橋派の大名・公卿・志士らで連座した者は100人以上にのぼる。
黒船来航により鎖国の夢を覚まされた幕府だが、たしかに直弼の開国論は情勢からし
正論と思うが、江戸幕府がこれまで政治政策を牛耳ってきた経緯からして勅許を待つ
必要はないが京都では尊皇大名や攘夷思想を持つ志士達の台頭で勅許は必須になった。
時の情勢は隣の清国では諸外国からの侵略で植民地の体になり異国から緊急の脅威は
一刻を争う事態になっていた。勅許は必要でも天皇の考えはあくまで攘夷論が強硬で
直弼の勅許不許可の日米修好通商条約締結は仕方なかっただろう。それにしても直弼の
弾圧は不条理なものであり将軍継承や、外国との条約に関係の無かった有能な人物まで
断罪したのは、あまりにも偏狭で勝手で残酷で井伊直弼は末代まで汚名を残してしまう。
橋本佐内、頼三樹三郎梅田雲浜吉田松陰小栗旬)等々・・思想的にも人間的にも
日本の将来を背負う屈指の志士達を断罪したのは国にとって計り知れない損失だった。
安政の大獄」は安政7年3月に桜田門外の変で直弼が志士達によって暗殺させるまで
続いたが半面に憎れっ子、直弼の死は会津藩にとっては今まで以上の重責を負わされる
運命になっていくのは歴史は皮肉であり不思議なものと思う。4回目のドラマの一部は
うら(長谷川京子)が覚馬(西島秀俊)の子を身ごもり、八重(綾瀬はるか)は佐久たちと共に
祝福する。しかし喜びもつかの間、覚馬は不意の訪問の攘夷派の不逞浪士が急襲される。
一方、江戸では、かつて八重たちとも交流があった吉田松陰安政の大獄で処刑され、
その知らせを受けた覚馬や八重たちは悲しみに暮れる。そして、攘夷派の怒りを買った
井伊直弼が水戸脱藩浪士らに桜田門外で暗殺される。江戸城にて容保(綾野剛)ら有力な
親藩譜代大名による水戸の処分についての話し合いが行われ、そこでの容保の発言が
水戸討伐に傾いた評議の流れを変えることになる。