隠居の独り言(1155)

人はムードに流されやすい。日銀が新たに「量的、質的金融緩和」を導入すると発表した。
金融緩和とは日銀が紙幣を大量に刷り銀行を経て企業や個人に融資すれば今までより
金回りがよくなる。企業は新しい設備投資をする。賃金が上がる。反面、金の価値が
下がれば物価が高くなる。消費者は高くなる前に品物を購入する。品物が売れれば当然
景気が良くなる。金の流通は円安に繋がり輸出の儲けも良くなり会社の株価も高くなる。
目を覚ましたようにモノが動き出して景気が上向いているムードが漂っている。
自社の仕事も価格単価上昇は未だ望めないが仕事量が増えている。でも、これで本物の
景気のいい時代が来るのかと半信半疑で、アメリカの景気もイマイチ、欧州EUの金融不安、
中近東の政情も定まらず、独り勝ちの中国の機嫌取りだけで景気不透明感は変わらない。
それでも景気の雰囲気がいい。中小企業は腹八分目だが気持ちだけでもゆったり気分だ。
老後の蓄えと昔に買った株の塩漬けも冷凍庫から冷蔵庫へ移して解凍を待っているが
日々株式欄を見るのが楽しみだ。一昔前までは、財産の保有は預貯金、不動産、株式
を三等分するのが理想と言われたが株式に関しては銀行、鉄鋼、電力が最も信頼があった。
でも結果は昔の格言で泣きを見た。今は元の鞘に収まるまでじっと我慢の子をしている。
世の中変われば良い日もあるだろう。年齢的に賞味期限切れたがリタイアが許されない。
理由は仕事に関連する職人の多くが年寄りで年金が基礎年金だけなので仕事が無いと
食べていけないからで長い期間の苦楽を共にした戦友を大事にしないとバチが当たる。
公務員や一流企業で働いた人は一定の年金が保証され老後は安心だが職人は可哀相だ。
帽子にかぎらず日本の繊維関連の製造業は消滅の一途を辿る運命にあるといっていい。
どんなにアベノミクスが製造業に陽を当てるといってもコツコツと何年もかけて腕を
磨いていくのは容易でなく豊かな環境で育った現代の若者に跡継ぎは不可能に近い。
そしてどんなにロボットが進化してもロボットは人間の持つ微妙な勘は覚えられない。
結局は労賃の安い東南アジアの工場に仕事が行って日本のメーカーの廃業の悪循環だ。
上場企業の円安の儲けの配分が零細企業に回ってくるのはいつの日になるのだろう?
斜陽産業と言われて久しいが職業として良い景気が先なのか?短い寿命が先なのか?
老いた職人が呟く「あと何年、仕事ができるかなぁ」耳タコになるほど聞かされている。
人生に悩みは尽きないが、悩むからこそ人生の明日がある。