隠居の独り言(1191)

お盆休みが終わってホットしている。休みのさなかは今日の月曜日が待ち遠しかった。
などと書くとお前はそんなに仕事が好きなのか。と思われそうだが遊び大好き人間だ。
9月になると百貨店や洋品店など店頭は一斉に夏物から秋冬物に切り替えられるが
品物を納める側の製造業にとって8月は最後の追い込みに猫の手も借りたいほどだ。
繊維業界の季節ものを生業としているので皮肉にもお盆と正月は最も忙しい時期で
盆休みの報道は仕事に携わる者は恨めしい。店を開ければ「怠け者の節句働き」と
世間から揶揄されるので屋内で職人は黙々と仕事をしている。仕事をしながらTVや
ラジオから流れるのは休日の情報ばかりで海外旅行、新幹線、車の渋滞情報などは
別世界を見るようで職人の家族にとっても子供を遊びに連れていく余裕が出てこない。
そしてこの時期が終われば仕事も少なくなり閑散期になって収入も比例し減っていく。
職人は若いときから夏休みも冬休みも関係なく働き時間に追われ一応自営業なので
賞与も退職金も無く、腕一本のしかも低賃金で日本の技術立国の底辺を支えてきた。
人生を魚に例えればマグロ人生とマダイ人生がある。マグロは生まれてから死ぬまで
泳ぎ続けなければならない構造にできている。睡眠も泳ぎながら体を休める時がない。
マダイは海底で真っ赤なオベベを着て優雅に暮らしている。食事は小魚やエビなどの
高級魚、昼間は仲間と群れをなし遊び、夜になると岩陰に隠れておとなしく眠っている。
悲しいかな、人間も魚のように生まれながらにして生活の運命が決まっているようだ。
世間の休みが長いと必ずしも頻繁にあるわけではないが病気になったときに医者が
休みだと難儀することがある。孫が熱を出したときもあったし、自分の歯が痛くなって
歯医者へ行けば治るのだが月曜日まで我慢したこともあった。世間は様々な職業で
成り立っている。お盆もバカンスも結構だが日本中がいっせいに休むという習慣には
無理があり裏で嘆いている人も大勢いることを知ってほしい。生来日本人は働き者で
暇を惜しんで仕事するのが美徳とされた。今も勤勉な人は有給休暇を取りたがらない。
だから政治は法的な祝祭日という休日を沢山増やして国民が一斉に休むことにしたが
余計なお世話だ。しかし盆という休日は無くても多くの人が必然的に長期に休むのは
信仰心の習慣からきたのだろう。だが一部の好景気にあやかるサラリーマンを除いて
休みより仕事が欲しい人も多いはずだ。休暇まで横並びというのは考え直してほしい。