隠居の独り言(1204)

日本人の国語力が落ちている。もう何年も前から指摘され憂慮されているが一向に
改善されない。このほど文化庁で日本人の国語の意識の現状について調査されたが
例えば手紙は手書きすべきだと考える人は学生でその意識があっても大人になると
減少していることが分かった。今やメール時代で簡単な文で情報交換している現状は
便利な反面、心のこもった情的な信頼に欠ける。最近の若者は文字を書かなくなった。
若い人だけでなく年配者の人たちも含めて手紙やはがきを滅多に書かなくなっている。
日本語には文語体と口語体があるが今では話し言葉のほうに重点が置かれている。
たしかに文字で書かれたものは一定の空間の中で静止した形で存在するから前後の
文脈も捉えやすいし一字一字をじっくりと見つめることもできる。物を書くという行為は
相手に自分の気持ちを伝えるために文字や文面を大切に考え意思を込める。それは
国語を子供の頃にきちんと身につける重要性を親も文部科学省も学校も忘れている。
大抵のメールは時候の挨拶など日本の伝統的な書式も欠き、文章の起承転結も欠く。
言葉を略すればいいというものでないと思う。それに外来語や外国語のカタカナ語
以前より一般化したものの意味が分からずに困ることも多い。政治家の発言からし
イノベーションアジェンダ、モチベーション等々意味を解する人はどれほどいるのか。
先の東京五輪招致プレゼンテーション(説明・発表)で滝川クリスタルさんは日本語の
「おもてなし」の意味を話したが日常生活であまり用いられなくも美しい日本語の一つだ。
言葉の貧弱の要因は若い者はケイタイに夢中になり年寄りはTVに噛り付いている。
ケイタイもTVもなかった昔は相手に気持ちを伝える手段は言葉を発するしかなかった。
それが国語力を磨くことであり家庭も含めて社会全体が言葉に満ち溢れていた。今の
夫婦も恋人も「間」の持てないカップルが多いと聞くが言葉の紡ぎ方を勉強してほしい。
国語力の衰退を加速させるように学校の方針も小学校から英語を取り入れるのには
戸惑いを感じる。大部分の日本人は日本で生まれ日本に暮らし日本で生涯を終える。
英語を必要とする人達が習えばいいのであって英語を必須にする発想が分からない。
国語の勉強に正しい言葉や敬語の使い方に多くの時間を割いたほうが、人間関係が
豊かなものになる。発想の原点が違う気がする。読書の秋、国語力を身につけよう。