隠居の独り言(1221)

今年のプロ野球は終わったが野球オフシーズンの男は人生を忘れた漂流者のように
憂鬱感が漂う。今年のプロ野球楽天の優勝、田中将大30連勝、メジャーリーグ
上原投手など低迷ぎみだった球界が一変して沸き立つような人気復活に目を細めた。
今の若者はサッカー熱のほうが高いが、それでも野球ファンの多いのに安堵している。
でもこれからの季節はTVのスポーツニュースも新聞のスポーツ欄も虚ろに見過ごす。
それは冬眠する虫や熊のようで3月の啓蟄ごろまで日々のワクワク感がないからだ。
得意先にプロ野球の大好きな人がいる。仕事の合間に野球の話になると止まらない。
それだけ中年男性に野球ファンがたくさんいるということだろう。男には自分を大きく
みせるDNAが潜んでいるものだが「人生というものはなぁ」「成功というものはなぁ」と
切り出すと大抵はソッポを向かれるが、でも野球を譬えに人生の機微を語るのはいい。
平成18年夏、二人の高校球児が二度の決勝戦で投げ合いその夏を明るくしてくれた。
過去に何人も甲子園大会のアイドルで熱狂的なオッカケを受けた球児は沢山いたが
あの夏の日の早実と苫小牧の二人の投手は特別だった。でも人生の先は分からない。
田中将大という投手はね、努力と気持ちで今の地位があるんだよ」決勝戦を戦った
ヒーローをネタにすると話が早い。「見せましょう、野球の底力を、東北の皆さん、
絶対に乗り越えましょう。今、この時を絶対に勝ち抜きましょう、この時を」楽天
プロ野球選手会長嶋基宏が2011年4月2日の東日本大震災直後の復興支援のため
行われた慈善試合前に演説した。高校野球にしてもプロ野球にしても選手の言葉が
ストレートに響くのはスポーツの醸し出す純粋さと、それなりに名を挙げた一流選手に
与えられた特権だろう。名言や格言だって語った人が有名人でないとサマにならない。
実際、普段の会話でも相手に自分の考えを伝える言葉にも意外に難しいときもあって
うまく伝わらないときや逆に誤解されて反発を受けるときだってある。野球に譬えれば
「言葉というものはねぇ、ピッチャーの投球と同じなんだよ、コントロールが僅か数ミリ、
違うだけで、三振にもホームランにもなってしまう。心して話をしなくてはならないよ・・」
野球の譬えも無くなったオフシーズンは、心穏やかに過ごす冬の時なのかも知れない。
黙っていたいわけじゃない。話も沢山ある。でも話のバックに譬えがないと味に欠ける。
冬も来ないのに春が待ち遠しい。