隠居の独り言(1224)

先週19日の東京駅から皇居にかけての群衆の多さに驚いた。皇居の天皇陛下への
信任状捧呈式に向かうため時代絵巻を思わせる華麗な隊列の馬車の中から、新しく
駐日米大使となったキャロライン・ケネディさんは優しい笑みで沿道に詰めかけた
人々に手を振り、眩いほどに素敵な姿に日本中が魅了され、歓迎ムードに包まれた。
折しも皇居前の銀杏もケネディさんの到着に合わせるように最も美しく色づいていた。
自分も野次馬よろしく駆けつけケネディさんが帰りの馬車から降りた数秒間拝見した。
報道によればケネディさんは外交の素人ということだが、でもシンボル的な存在でも
駐日大使赴任は素晴らしい適役と思う。実務はベテラン外交官がすればいいことで
アメリカきっての名門を大使にするとはオバマ大統領も日本に粋な取り計らいをした。
王朝を持たないアメリカにあって、それになぞらえられる屈指の名門はケネディ家を
置いて無い。けれども何故か一家には悲劇が多く、悲運の枕詞のように語られてきた。
50年前の1963年11月22日、46歳で暗殺されたジョン・F・ケネディ米大統領
親日家で、事件が無ければ次年に訪日の予定だったというが長女のキャロラインも
新婚旅行に日本を選び、そして念願の駐日大使になるとは何という巡り合わせだろう。
あちらから元米大統領は手放しで喜んでいるに違いない。50年前に暗殺された当時、
アメリカとソ連は東西冷戦の緊張はピークに達していて米ソは核戦争の瀬戸際だった。
ベトナムの北半分は赤く染まり、ドイツはベルリンの壁で東西に分断され、キューバ
アメリカの喉元を狙っていた。その激動の時に米国民を鼓舞したのがケネディだった。
ニューフロンティア政策を掲げアメリカを正しい方向に向かわせようとした矢先の死は
アメリカの喪失感が未だ消えていない気がする。ケネディの名言集に「人類は戦争を
終わらせなければならない。でなければ戦争が人類を終わらせるだろう」と、あるが
存命していれば、其の後の世界も違ったものになっていただろう。イラク、アフガンの
戦争も避けられただろうし日本との対等の新しい同盟関係を模索していたというから
日米同盟も一段と強固なものになり今の中韓の偉そうな態度もできなかったはずだ。
歴史の歯車とは予期しないことから異なった方向へ進んでいく。親子共々に親日家の
新駐日大使キャロライン・ケネディさん、日本の美しい文化と、深い伝統に触れて
ますます日本を好きになってほしい。