隠居の独り言(1226)

ストーカー殺人事件を聞くたびに最近の男は女との別れ方がものすごく下手になって
いるとしか思えない。男と女が恋愛を始める。けれどいつまでも愛が変わらないのに
越したことはないが、時の流れでどちらかが飽きて相手を嫌いになることもあるだろう。
最初は好感を抱いて付き合い親しくなるほどに相手の程度や気付かなかった欠点が
見えてくるのは当然の成り行きだ。でも互いの未熟がわかっただけでも二人の進歩で
けっして男なり女のわがままじゃない。たとえ恋愛が結婚に発展し教会の神父の前で
「その健やかなときも病めるときも」と誓っても、それは言葉の遊びに過ぎないことは
大抵の頑固我が儘な老夫婦の姿を見るとわかる。時間の経過で心が変化することは
恋愛に限らず離合集散は生きるための進化であり人はそうして歴史を繰り返してきた。
最近の若者はすごく短絡的で刹那的だ。愛の筋道を考えずにすぐ愛欲に走ってしまう。
「男にとって愛は生活の一部だが女にとって愛はその全部である」バイロンの言葉は
男心と女心の、的を射ているが互いを尊重しなければ誤解のまま人生を終えてしまう。
世間が便利になった分、人の心は乾燥したものになっていく。以前は家族、隣近所の
触れ合いから付き合いの学習をした。人情を肌で知り、反面に妬みや憎しみも覚えた。
若すぎる恋愛は御法度だったが世話好きの仲人さんはどの街にも点在し両家の親の
了解のもと責任をもって仲を取りもつ人情味あふれるおばさんが大勢いた時代だった。
今の男女の出会いはITのSNSなどの普及で驚くほど気軽になり知り合えばLINEで
二人だけの狭い世界を作る。つまり簡単に交際が始められる分、簡単に別れることが
出来ない。相手の気持ちが冷めたとき、自己中心的な男は脅かすことしか考えない。
恋愛に限らず愛のある別れはとても辛いが別れを別れと見極めることが成長になる。
男と女は一旦切れたら呼び戻しはありえない。理性を磨くことの大切さを強く勧めたい。
だからストーカー行為は時間の無駄であり、それより新しくはじまる愛に精魂を注ごう。
かくいう自分も若い頃は随分と失恋をした。恋を失って薄汚くもなったし自暴自棄にも
なったが、でも惨めな気持ちは時が薄めてくれる。そして愛に敗れたことで、人生まで
破れてしまったと思いこむのが最もいけない。人生は嫌なこと辛いことばかりじゃない。
今、ストーカーをしている君に言いたい!君にはもっと、ふさわしい人が待っている。