隠居の独り言(1254)

♪夕焼け小焼けで日が暮れて・・子供の頃、夕方には遊んで疲れて、腹がペコペコで、
歌を歌いながら家に帰る。家には母の手料理が待っていた。それが昔の時刻だった。
今の日本人の美徳の一つに「時意識」というのがある。日本人は時間の伝統のうえに
組織された社会に住んでいる。会社も学校も役所も全てが、正確な時間管理のもとで
動いている。電車もバスも飛行機も時刻表にしたがって運行されている。通勤電車の
満員で時々運行が遅れるが車内放送で「何分遅れて申し訳ありません」と謝っている。
乗り降りが多く時間が掛かるのだから謝る必要ないと思うのだが日本人の特性だろう。
列車の時刻などアテにならない国が多いと聞くが日本の列車運行は模範生といえる。
JRなど新幹線の発車時間に合わせて自分の腕時計を回すというからたいしたものだ。
今回「オヤジバトル」出演も始めに演奏時間を「3分以内」に纏めるように指示された。
カルテットが演奏するラテンの歌は大抵が3-4分で曲に込めた内容を表現するには
自由な時間が欲しいところだが正味3分以内にするためリーダーがアレンジをした。
それも3分ギリギリ、2分55秒辺りで終了するのがベターで、始めストップウオッチで
測りながら一曲に仕上げる。歌のイメージを変えないよう時間の枠に当てはめるのは
易しいようで難しい。それより今回の驚きは本番までにかかったリハーサルに要した
時間や回数は緻密な計算のうえに成り立ち何十人のスタッフがそれぞれ台本を持ち
淀みなく流れる仕組みで、出演者たちは前日にはリハーサルで丸一日の時間をかける。
ライブ当日もPM4時からの開演なのに朝10時からリハーサルとインタビュー漬けで
本番までにドット疲れてしまう。それと機材の多いこと!大型トラック2台分の荷物で
それをテキパキ備え付けるのに目を瞠る。テレビの裏方をすっかり見させて貰ったが
とてもいい勉強になった。けれどNHK担当ディレクターはこれで終わったわけでない。
約2時間半のライブの番組放映75分内に7チームの演奏、インタビュー、審査員の批評、
表彰式など寸分たがわず番組を作らなくてはならないからこれからが彼らの本番だ。
今まで何気なく見ていたテレビの裏に、こんな作業があったとは思いもよらなかった。
大勢の裏方があり彼らの仕事のご苦労を垣間見た思いがした。まさに「時は金なり」
放送界で働く人はモノクロニック人間の塊というべきだろう。そもそも私たちの音楽は
アナログ的であり、気分良く歌うには時間を気にしていたら満足な曲は仕上がらない。
それにしても人生で二度と味わえない素晴らしい体験と感激をいただいた。