隠居の独り言(1318)

かつて三億円事件というのがあった。白バイの警官を装った男が、現金輸送車から
まんまと三億円の金を奪って逃走、その似顔絵がいたるところに貼られ庶民の格好の
話題となったが僅か7年で時効成立、戦後最大の迷宮入り事件となった。市井の庶民は
一生あくせく働いても、この額に達しない三億円に犯人を半ば憎み、半ば彼を羨んだ。
それから暫くして、時の総理大臣・田中角栄が犯したロッキード事件というのがあった。
アメリカ航空機製造大手のロッキード社による主に同社製の旅客機の受注をめぐって
明るみに出た「総理の犯罪」という日本始まって以来の汚職事件だが額は五億円也。
政治のありかたについて自分はとやかく言うつもりはない。民主主義とか選挙とかの
側面には金権が付きものだろう。角栄だって賄賂して豪奢な暮らしをしたわけでない。
それは配下のタカリが原因だ。元をたぐっていけば世間が許しているから悪いと思う。
それでも世間の酒の肴にされた。でもいかがわしいお金も今に思えば一桁5億の金。
中国の偉い人の失脚の表向きの賄賂の金額は160億円を超すという。桁違い過ぎる。
平成の現代は都心のマンションでも億の額が当たり前で景気上昇の今は飛ぶように
売れるという。草葉の田中角栄も、多分鬼籍のニセ警官も何と思っているのだろうか。
週刊誌の見出しも歌舞伎の尾上菊之助市川海老蔵の結婚式の費用が何十億とか、
某歌手の借金2500億せっせとドサ回りで1500億返したとの記事はホンマかいな?
日産自動車社長ゴーンが年俸10億とかだが株主や社員も唖然として何も言えない。
そんなに貰ってどうするの?スーパーで1円でも安い大根を探す庶民の僻みだろう。
サントリーソフトバンクアメリカの会社を傘下に収める金額1兆円以上という話も
市井に暮らす庶民の金銭感覚には見当もつかず遠い世界のヨソゴトのように思える。
どこにそんなに金があるのか?その反面、国の借金が1000兆円もあると言われても
お金の仕組みが分かったようで分からず納得もできず怒ることも笑うことも不可能だ。
節約、勿体ないという日本人特有のモノを大切にする美徳が失われた現代が悲しい。
この無茶苦茶な金がらみは絶対に世間をおかしくする。いずれ消費税アップは必至。
年金・医療制度削減も現実になることは、みんなが知っていて知らぬふりするのは、
何とかなるだろうとタカをくくる無責任体質は誰も責められない。本当は国民の責任だ。
選挙民の媚を買うために無用の道路・鉄道・橋を作る。デフレ時代も年金を下げない。
そんな無責任なマニフェストを信じた国民にも責任大だが政治家の言葉は美辞だけ・
みんな自分の都合の悪いことは黙っている。角栄は5億円を捻って罪に問われたが
後の歴代総理が選挙を有利に導くために借金を重ねた国債額は約1000兆円になる。
どちらが国民への罪が重いのか。今の世間の格差を泉下の角栄に知恵を拝借したい。