隠居の独り言(1337)

学校に通う孫たちは全員、英語が苦手だ。でも孫たちの名誉?のために言いたいが
日本人はおしなべて英語が苦手といえる。全国に英会話教室なるもの無数にあるが、
満足すべき成果を収めて目的を達成したという受講生にお目にかかったことがない。
どのくらい英会話で相手と心の通じる話ができるようになったか、その不毛さは例え
小学から英語を教えても無理だろう。不毛に終わるのは読み書きにせよ発音にせよ
言葉というのは生活という根源な活動と理解が無ければ流暢に話すことが出来ない。
人は赤子の頃から誰に教えられなくても生まれ育った環境の中で自然に身に付いた。
赤子は近しい周りの人の沢山の言葉を浴びながら頭脳の根幹に蓄えられて育つが
あまりにも日常的で一見当たり前のことなのにそれを不思議と思い誰も深く考えない。
帰国子女が流暢に外国語を話せるのは単に読み書きでなく現地の子と遊んだからだ。
近くのアパートに南米系の婦人が独り住まいをしている。どこに勤めかは知らないが
朝、出勤の挨拶で「おはようございます。今朝は寒いですね」来日して一年だそうだが
言いまわし、慣用句を口にするのは当節の女の子より語彙が豊富で受け答えが良い。
言葉の自然習得というのは、やはり現地で暮らすのが一番で生活に勝る語学は無い。
国際会議で日本の大臣が英語で演説しても何となく、ぎこちないのは日本の学校
辞書やテキストなどで覚えた単語を並べるだけで相手に通じているのかが疑わしい。
外国人が覚えたての変な日本語を喋っているのと同じことでないかとも思ってしまう。
それでも日本人が英会話に憧れる理由は何だろう。それは理屈抜きで格好いいから。
自分は英会話は無知だが意味が分からなくても外人の英語の語感は耳に心地よい。
日本語は文法も語感も素晴らしいが不得意なのはおしゃべりと会話の区別が曖昧で
お世辞は美しくてもテニスのラリーのように互いが相手に返す言葉が美しくないと思う。
そして何より欧米人は会話の機会が多く口から発するだけでなく体全体を使っている。
食事やお茶の時間が長い習慣もある。日本人のように新聞を読みながらの朝食をし、
テレビを見ながらの夕飯なんて滅多にないそうだ。欧米は会話こそ最良の消化剤との
格言があるという。会話のタネと言葉を上手く引き出すことが欧米人の魅力といえる。
言葉は長い文化の中から醸成されるもので現地の生活習慣や文化を知らなければ
外国語を完全にマスターしたと言えない。日本人が日本の言葉を流暢に話すように
英会話は英語圏の文化を知る方が近道なのかも知れない。現地留学も考えてみよう。
我が人生の後悔の一つは英語の習得ができなかったこと。後悔先に立たず。