隠居の独り言(1360)

今年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」は、江戸時代末期の幕末のドラマで歴史好きには
堪えられない作品だ。この大河を見る前に関連する司馬遼太郎の「世に棲む日々」を
読んだが、あれからもう十年以上経った今でも感動が尾を引いている。 心に残るのは
吉田松陰の愛すべき純粋無垢な青年像はこの小説で松蔭の人生と思想が理解でき
背景にある時代が面白かった。小説の構成は二部に分かれ、前半の主人公は松陰、
後半が高杉晋作で、ともに幕末を語るには欠かせない人物で、ドラマも面白いだろう。
幕末は日本史でも最も輝いた時代で4年前、福山雅治が演じた「龍馬伝」が良かった。
今回の大河ドラマは、時代に活躍した主人公を脇役から客観的に捉える手法であり
7年前、宮粼あおいが演じた幕末大奥の「篤姫」がヒットしたために柳の下の泥鰌
狙っているように感じる。今回の主役も井上真央が演ずる吉田松陰の妹、杉文という
女性から見た幕末を見る。前々回の「八重の桜」も歴史上の人物たちから少し離れた
綾瀬はるかが演ずる新島八重が主役だったので客観的な幕末ドラマの延長戦だろう。
長州は250年ほど遡る関ヶ原の合戦で西軍についたために徳川から領地の大半を
没収され石高も四分の一に減らされ屈辱を味わったが幕末に復讐のチャンスが来た。
歴史の経過はさておき、長州藩の下級武士、吉田松陰鎖国日本の閉塞感が激しく
世界を見ようと国禁を犯して伊豆下田に停泊中のアメリカの船に乗り込もうとするが
失敗して捕らえられ死罪は免れたものの国禁は重罪人なので長州で謹慎になり藩は
その上に獄へ繋ぐ。その謹慎中の僅かの時間に松下村塾を開き結果、日本を変える。
松下村塾は僅か3年間のみの存在だったが尊王攘夷を掲げて京都で活動した者や、
明治維新で新政府に関わる人間を多く輩出した。当時の長州の人口は約30万人と
言われている。全国の中でも藩の就学率はトップクラスで人口の1割以上ともいわれ
4万人近くが学んでいた計算だ。長州には明倫館という学校があったが身分制度
関係で軽輩者は入れなかった。反面に軽輩者の集まりだった松下村塾の門下生には
歴史的人物の高杉晋作久坂玄瑞品川弥二郎伊藤博文山県有朋山田顕義
吉田稔麿前原一誠、赤根武人、入江九一、等々、錚々たる明治のリーダーたちが
輩出されたのは、その規模の壮大さからして奇跡中の奇跡で綺羅星が燦然と輝いた
明治の源は松下村塾と言って過言でない。「花燃ゆ」は幕末の長州を主に描かれた
作品だが、今年を楽しませてくれるだろう。ドラマ同様近未来の日本が輝いて欲しい。