隠居の独り言(1377)

今年の確定申告も終わったが、遺産相続の税率が本年度から基礎控除が少なくなり
実質、増税となっている。今まで一般の家庭なら相続税に縁がなかったが、これまで
相続財産6000万円まであった控除税率の遺産相続税が本年から一挙に40%オフの
3600万円以上に、しかも法定相続人の控除額も1人1000万円から、こちらも同じく
40%オフの600万円に減額された。基礎控除額が縮小されたので対象世帯が倍近く
増えるという。3600万という金額は普通の家屋一軒分の価格でそれだけで控除額に
達してしまう。持ち家があれば大黒柱の死後、残された現金、預金、手形、株などの
金融資産全てが対象だ。巨額の資産を持つ富豪ならいざしらず生涯に亘り汗水流し
貯めた預金まで搾り取ろうとするのは、かつての悪代官であり生血を吸うドラキュラだ。
戦後に行った農地改革で地主の下で働いていた小作農が自作農になって郊外では
俄か地主が増え資産の貧富が鮮明になったが遺産相続税で一定の役割を果たした。
しかし親から貰った土地は棚ぼた財産であり、自らが築き上げた財産とはワケが違う。
自分が若かった頃、年金も不完全だったので老後の生活のための目的の貯金であり
できるだけ生活費のムダを省き質素な生活を宗とし将来に備え税負担もきちんとした。
若き無一文の一匹狼がコツコツ貯めた預金に、死して再び課税するのは二重課税だ。
誰もが自分が苦労して得た財産を、子や孫に残したいと願うのは当然の気持ちと思う。
相続税の対象も親から貰った財産と、自ら成し得た財と区別して課税するべきと思う。
確かに相続税、固定資産税が原則課されない諸外国では貧富の差が歴然としている。
先進諸国の殆どが相続税は無いが、アメリカも反対機運が高まっている。その意味で
格差を縮めるのには良い法律だが資産家はともかく庶民まで課税対象は行き過ぎだ。
「働き者が損をする」の言葉通りの法変更としか思えない。天文学国債赤字解消の
プライマリーバランスに早く持っていきたい政府の気持ちは分かるがそれなら最初に
議員定数削減や政党助成金を廃止し自らが身を正し、次に国民に我慢を乞うべきだ。
消費税の増税が最も国民に等しく公平であり、細々した政策に手をつけるべきでない。
今までなら一般的サラリーマンは相続税とは所詮他人事であり金持ちにはどんどんと
増税すればいいと言っていられなくなる現実が来ている。ここで懸念される問題には
遺産分割を巡る家族間のトラブルで仲良しだった兄弟が相続で揉める悲劇が見える。
それは他人事でない。もう八十路のゴールが近いのでそろそろ終活を考えているが
自分だけの段取りでなく、子や孫たち家族一人一人が心置きなく家系を繋いでほしい。