隠居の独り言(1393)

浅利慶太のオリジナルミュージカル「南十字星」の脚本を読んだ。太平洋戦争中での
日本軍のインドネシア進駐と軍政統治BC級戦犯裁判において無実の罪で裁かれた
日本軍将兵の悲劇を描いた史実を踏まえたミュージカルで読んでいて目頭が熱くなる。
インドネシアに出世したばかりで何も知らない学徒だった保科勲が戦後に捕らえられ
連合軍の誤認や曲解から捕虜虐待の罪を着せられ、軍事裁判で死刑の宣告を受ける
短い人生が主題となるミュージカルで劇中にはインドネシア独立運動指導者の娘との
愛も悲恋に終わるのも読んで胸がつまる。保科勲は「歴史の流れに身を投じることが
自分の運命であり、明日の若者に新しい日本の未来を託す」と言い残して絞首台に
上っていく。戦後、太平洋戦争の南方戦線では日本軍将兵の1000人以上が、BC級
戦犯という名の汚名を着せられ処刑されたが、そうした事実を戦後の日本の学校
家庭で教えない。確かに太平洋戦争はアジアの人々を戦果に巻き込んだが、しかし
欧米諸国での植民地支配からの独立の導火線となったのは事実で、戦犯というのは
アジアの原住民からでなく、宗主国である欧米諸国の日本に対するリンチであるのも
歴然とした事実だ。戦後の日本が謝罪と賠償を要求されそれを忠実に守ってきたのも
アジアの人たちへの対象でなく、欧米連合軍という勝者への償いであり、その辺りを
履き違えている気がしないでもない。戦争は日本と欧米でありアジア人が対象でない。
本来なら迷惑をかけたアジアの人たちへの償いが筋だろう。ちなみにインドネシア
太平洋戦争後にオランダからの独立運動の戦争を5年もかけ多くの犠牲者を出して、
独立を勝ち得たが、オランダは独立代金としてインドネシアから11億3000万ドルを
せしめる、あくどさだ。植民地時代は搾取するだけ搾取して撤退するときは解放金を
出させるオランダのやり方に怒りを覚えるが、欧米人の正体を見た感がしてならない。
日本が朝鮮半島や台湾へ独立代金を要求する考えも付かないが、太平洋戦争後の
欧米諸国がとった植民地への原住民に対する処置はオランダに似たりよったりだった。
植民地の終止符を打った要因は黄色人種の日本が白人諸国と対等に戦った現実を
見たからであり、インド、パキスタンビルマ、マレーシア、ベトナムカンボジアなどの
欧米諸国の植民地が独立を果たしたが、その欧米諸国の恨みは日本に向けられる。
A級、BC級戦犯というのも敗者へのリンチであり、植民地的憲法に今も縛られている。
浅利慶太の脚本を読んで戦後70年も経つのに未だ悪夢が蘇る。