隠居の独り言(1429)

安倍内閣が提唱する安保関連法案に人気がない。法案の説明の不足も否めないが
野党の質疑も重箱の隅をつつくような細々しさにも大きな原因がある。ここはひとまず
国会で法案を通しあとは将来の結果を待つしかないだろう。在任中の総理の人気が
ないのは今までの通例になっているが戦後初の宰相・吉田茂の在任中は最悪だった。
ワンマンと称され国会議員にバカヤローと罵り、あげくにカメラマンに水をぶっかけた。
しかし吉田茂の功績は戦後のGHQによる占領時代を巧みな国家的戦略で乗り切り、
戦後日本の復興に大きく貢献した事実だ。その評判は彼の死後一代の名宰相とされ、
国葬になった。首相在任中はあれほど国民に嫌われても日本の将来図を持っていた。
吉田の子分の池田勇人は「将来、月給を2倍にします」と言ったがマスコミはこぞって
出来るはずないと冷笑したが、十年を待たないで倍以上になったのは、周知の通りだ。
評判の良くなかった岸信介首相が安保改定に乗り出しアメリカ側と話し合いがもたれ、
新安保も現実味を帯びたが、やがて反対デモが活発化して、所謂60年安保闘争
起きたが新安保条約が強行採決される。抗議デモの最中に東大生・樺美智子さんが
亡くなるという悲劇もあったが、でもここで新安保が成立していなかったら日米同盟に
ヒビが入り日本の安全が保証されなかっただろう。それにしても闘争は何だったのか。
デモに参加した人たちは安保の中身も見ないで、単に、岸が進める日米安保改定を
許せば平和国家・日本の立場は損なわれるとの思いだけで安保反対を叫びデモした。
そもそも旧安保条約に比べれば改正案の方が遥かに日本の権限が確保されていた。
だから中身を理解すれば反対するはずはなかったのに「岸憎し」の感情論だけだった。
今、国会で安保法案の審議が行われているが、どこの野党も単に「戦争法案反対」や
安倍内閣不信任」と唱えるだけで対案もなく反対なら理由をきちんと説明してほしい。
感情論だけで行動するのは60年安保闘争と同じ徹を踏んでいる。冷静に判断しよう。
同じ頃にフィリピンがアメリカと軍事同盟を破棄したが結果、南シナ海の中国覇権を
許すものになった。安倍晋三自民党総裁再任された。安倍総理戦後レジーム
脱却が叫ばれる今こそ、いわゆる戦後70年は一体何であったのかが問われている。
改めて宰相というものについて考える。はたして安倍晋三は宰相の器としてどうなのか。
名宰相なのか。それとも国を誤らせる愚者なのか。「木を見て森を見ず」では通らない。