隠居の独り言(1439)

今年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」は良い作品だが先週、最終回の収録を終えたという。
「花燃ゆ」は最近15年間に放送された大河ドラマでは最も低い視聴率だったというが
自分は近年になく良いドラマと思っている。時代背景もさりながら主役の井上真央
演技が自然体で女心をうまく表現していた。キャスティングというのは考えると面白い。
大河ドラマの場合、歴史上の人物のイメージというのがあるから、うまくはまったときと
はずれたときの落差が大きい。吉田松陰役の伊勢谷友介久坂玄瑞役の東出昌大
兄役の原田泰造、母役の壇ふみ、久坂の愛妾役の鈴木杏、等々。それぞれの役柄を
心得て心に滲みる演技を見せてくれた。反面に偏見だが、楫取素彦役の大沢たかお
高杉晋作役の高良健吾木戸孝允役の東山紀之など歴史上のイメージにそぐわない。
それにしても松下村塾というのは凄い。今の小学から大学まで、これほど教育環境が
整っていながら松下村塾に遠く及ばない。松陰の日常の学問の教え方は親切丁寧で
平易で松陰の優しい心で接したと言われる。話逸れるが教育というのは教師に始まり
教師に終わると思う。松陰の人格と情熱が、後の明治のリーダーを生んだ結果だろう。
ただ残念なのは松陰が最終的な判断を誤ったことで結局それが命取りになってしまう。
倒幕の原動力になった長州藩天保の頃は藩の借金が年収の23倍もあったというから
今の日本と変わらない。しかも幕末の頃あの狭い長州で6万人の一揆が起こったが
歴史全体の動きを見ると表面の武士より農民の力で動かしたのをドラマは語っている。
少しの不満は高杉が考案し創設された奇兵隊の勝利の活躍と後に維新が終われば
疎んじられて悲劇に終わる筋書きの人間模様を、もっと細かに取り入れて欲しかった。
幕末を語るには奥が深すぎる。吉田松陰の妹という一人の長州女性の目を通しての
ドラマだったが、それでも長州の抱える幕末の細かいものしか語れないのは仕方ない。
薩長同盟大政奉還戊辰戦争、文明開化などの史実もあまり出なかったのも悔しい。
それにしても幕末の原動力になった松陰はじめ久坂、高杉、前原、龍馬、慎太郎など
革命の志士たちは維新を前に獄死、病死、或いは横死してしまうが、伊藤や山県の
維新後も生き残った運ある者は死を賭した志士の味を充分に食したのは皮肉と思う。
最終回で全て撮影を終えた井上は「人間としても役者としても、たくさんの人に支えて
もらいました。もっともっと力をつけ誰かを支えられるような役者になって、また皆様の
前に堂々と立ちたいです。本当に感謝しています。ありがとあんした」と話をしたという。
ドラマの見方によるけれど、その辺りの「花燃ゆ」の表現に自分は100点をあげたい。
正直、井上真央という女優は、前は知らなかったがドラマを見て彼女のファンになった。
ラストパートの群馬編は、まだ話の途中だが「花燃ゆ」は良かった。まだ早いけれども、
ドラマに携わった関係者の方々、ご苦労さまでした。