隠居の独り言(1446)

NHK出版に「60歳のラブレター」という本がある。夫から妻へ、妻から夫への手紙の
特集だが、長年暮らした夫婦の様々な生活、愛情、葛藤の手紙を読むと心に染みる。
その中の一通から。「結婚生活よりも長い別離、たった一度の浮気を許せなかった。
信じていた。ショックだった。浮気のことを除けば申し分ない人なのに・・毎月生活費を
届けてくれてありがとう。おかげ様で子供たちは子の親となり幸福に暮らしています。
17年前のことは全部忘れました。といえばうそになるが、女性の名前だけはしっかり
覚えていますよ。生まれ変わったら、もう一度あなたと結婚したい。私も強くなりました。
浮気の一つや二つ目をつぶりたいといいたいが、やっぱり浮気はだめです。定年まで
あと7年くれぐれも身体に気をつけてお励みください」夫婦の後日談は書かれてない。
手紙を読んで男と女、互いの感性が大きくすれ違ってしまった現代のモラル感を思う。
昔は妾を持つのは男の甲斐性と言われた時代があったし、公娼制度は厳然とあった。
結婚式で神父の前で恭しく愛を誓っても人類は男が女を支配するのは感性というもの、
けっして浮気を肯定しているわけでないが、たった一度の過ちも許せない現代女性の
潔白感、冷徹感は果たしてこれでいいのか。男女の性の違いと倫理観を見つめたい。
それまで妻は自分を選んでくれた夫には心を込めて愛してきただろうか。17年間も、
ずっと生活費を送り続けた男の誠意に対し、むしろ同情が沸くのは自分だけだろうか。
人に過ちはつきもの、過ちを繰り返して人は成長するものであり、この夫婦の結婚は
早かったのかもしれない。色々な人と付き合い様ざまな情報のなかから自分に合った
相手を見つけるのが順序だろうが、その中には突然の勢いで結ばれ、最近の傾向の
出来ちゃった結婚の多いのは人生をよく考えもせず弄んでいるとしか言いようがない。
夫にも言いたい。妻に隠れて浮気をするなら秘め事を絶対に隠し通す強力な意思と
相手を償える経済力がなければ大人の恋をする資格が無い。二度としてはいけない。
神社の絵馬に女性の結婚願望が見られる「今年こそ素敵な彼が見つかりますように」
「運命の人に出会えますように」見ると、いじらしいものだが結婚とはそんなに甘くない。
結婚前に考えもしなかった難問が次々と出てくるのが暮らしであり、結婚=幸せという
幻想も現実に壊される。縁は不思議なもの、その縁を大切にするかしないかによって
幸不幸が創り出される。先だって金婚式をした自分からのメッセージとしたい。