隠居の独り言(1497)

五月も半ば、陽春真っ盛りの今。人間にとって一年で最も過ごしやすい季節と言える。
気温は暑からず寒からず、湿度が乾いて、こんなに動きやすい五月は一年で最高だ。
願わくば、この時期の時間を止めて欲しいけれど四季の美しさと有難さを改めて思う。
先日、東北を旅したとき花が一斉に咲き自然の彩りを添えて春はまさに酣(たけなわ)、
そして其の後、日々春は老いて、物憂い晩春にと移行し、青葉の季節も濃くなっていく。
これから日本列島は多少時期の遅い早いはあっても確実に梅雨の季節がやってくる。
自然は驚くほど正確で梅雨を経て盛夏、土用、大暑へと移っていく。そして暑さも疲れ
秋の気配から日本列島は北から紅葉前線が南下し、やがて森は冬木立に眠っていく。
晩年になっての旅は初めて眺め、感じることが多い。晩年になってからの旅情がある。
自分は若い頃に仕事で台湾と韓国にしか行ったことがないが地球儀を見れば赤道と
南北極を除き世界でこれほど繊細に美しく移り変わるのはおそらく日本が一番だろう。
その日本も最近は都市化と温暖化が原因で以前のような季節の風景が変わってきた。
人間が作った地球の温暖化だが、鷲谷いずみ著「自然再生」によれば、ヒトと違って
身を守る術(すべ)を持たない生物は「種」が絶滅していくという。オレンジヒキガエル
イブクロモリガエルなど・・自動車の排気ガス、火力発電の化石燃料の大量消費など
二酸化炭素の排出が犯人だろう。海も同じく海洋汚染は益々深刻になっているという。
世界の海を漂流するプラスチックゴミは自然界には戻らなく小さい魚が間違って食べ、
より大きな魚が食べる食物連鎖は、やがて人間の口に入り、重大な脅威になっている。
人は利口な反面に愚かな生き物で、これらのことが分かっていても実行に移せない。
世界の異常気象は果たして人の仕業なのだろうか。太陽の活動異変説もあるけれど
これも確定できない。インドは広いが場所によって熱波に襲われ土地は乾燥し作物は
壊滅、違う場所では豪雨被害で多くの人が亡くなった。中国では南東部を中心に
平均降水量の倍以上の大雨が降って沢山の家屋が流された。南米北部、ブラジル東部では
異常高温、少雨で農作物などに大きな影響が出ている。その他アメリカ、アフリカ、
オーストラリアなど世界の異常気象は枚挙にいとまがない。日本は美しい四季という
贈り物の反面に地震津波や火山噴火など自然災害が多く地球はつくづく公平と思う。
それだけに五月の陽春が愛おしい。