隠居の独り言(1539)

秋たけなわ、「秋晴の候」ともいう。スポーツの秋、食欲の秋、芸術の秋、読書の秋・・
何をやっても秋は一番だ。でも、これら言葉も歳を重ねると虚しい「秋晴の候」になる。
友が一人倒れ、二人倒れ、気が付けば、毎年来ていた同窓会の便りも無くなっている。
自分も人のことは言えない。今は大きな病はないけれどスタミナが年毎に落ちている。
ちょっと調子悪いとすぐに医者に診てもらって処方された薬を律儀に飲む自分がある。
後期高齢者は診療や薬価は一割負担でとても有難いが、これらが国家財政赤字
要因と知ると素直に喜べない。やはり病前の生活習慣が大切なのは言うまでもない。
世間には健康法というオピニオンが色々あって素人は迷ってしまう。癌一つとっても
早期発見、早期治療が常識になっているが、一方で老人になったら放置しておく方が
長生きする統計との説もある。食事も三食きちんと食べること、の反面、一日一食が
良いと実行している人もいる。老人は肉を食べよう、逆に脂肪や肉を摂っていけない。
他にも、ラジオ体操は体に悪い、ジョギングはよくない、ウオーキングはほどほどに等、
かつて、紅茶キノコというのが流行したけれど、いつの間にか話題にも上らなくなった。
学者先生は持論を仰せだが、本当のことは分からないのではないか。いずれにせよ
歳を取るとどこか不具合になっていく。長く使っていた機械が壊れるようにあちこちと
部品が痛んでくるのは当たり前だ。体の動きが何かと遅くなる。朝早く目覚めてしまう。
老眼鏡が必要になる。耳が遠くなる。歯がダメになる。背中が曲がる。食事量が減る。
数え上げればきりがない。医療研究も進んでいるが研究者は若い人たちで、老人の
痛みや苦しみは未体験なので分からないのも仕方ない。歳を取って初めて知った
様々体験は老いなければ分からない。オリンピック競技場や宇宙開発もいいけれど、
現実的な老人の悩みの製品の開発に力を注いでいただきたい。老人はいつも人生の秋で、
冬のゴールが近づいている。