隠居の独り言(1590)

子や孫が幼い頃、就寝前にいつも童謡や童話を聞かせるのが自分の役目だった。子供や孫が
素直に育ってほしい。優しい性格になって欲しい。当たり前なのだが日々となると爺も頑張り
風呂も一緒で、昼間あったことを話し聞くのも子育てには欠かせないコミュニケーションだった。
童話は桃太郎、かちかち山、金太郎などのポピュラーの物から下手な自作物まで多種多様で
子らには迷惑だったかも知れない。それでも途中で寝てしまう子らの満足の安心は忘れない。
先日行った狸の茂林寺で、孫との様々な思い出が蘇って走馬灯のワンシーンが頭をよぎった。
童話「分福茶釜」より・・昔々、ある一人の貧しい男性がワナにかかった狸を助けてあげました。
その夜、狸は男性のもとへやってきて、お礼に自分が茶釜に化けるからそれを売ればいいと
言いました。あくる日、男性は狸が化けた茶釜を、お寺の和尚さんに売りました。和尚さんは
茶釜を持ち帰り、さっそく水を入れて茶釜に火にかけました。すると「あ、あちち。あつーい!」
狸はあまりの熱さに耐え切れず、半分もとの姿に戻ったまま男性のところに逃げ帰りました。
これでは恩返しじゃないと、狸は男性に提案をしました。「茶釜が曲芸を披露するお店を開こう」
そうして狸は毎晩たくさんのお客を集め、観客の見る前でご自慢の綱渡りをやってみせました。
茶釜が綱渡りをする!という噂はたちまち人々の間に広まって男性のお店はいつも大盛況!
楽しんでいるお客を見て狸は綱渡りも上達で。勿論、貧乏だった男性も大金持ちになりました。
が、茶釜に化けた狸が元の姿に戻ることは二度とありませんでした。めでたし、めでたし・・