小僧一人旅 その十七

人間万事塞翁が馬で福も禍も予期せぬ頃にやってくるもの・・商いのウェーブも、「こうのとり」の縁も、神様のご機嫌次第で、先が読めない。とくに男と女の間柄は易しそうで、中々難しい。小僧の青春時代に心底好きになった女性は故郷の初恋の人と、雪国生まれの女性に燃えたが、どちらも失恋の憂き目だった。失恋体験をすれば人は大きくなると言う。果たしてそうだろうか。「戦争と貧乏と失恋を知らぬ人は人生の味の半分しか分からない」米国作家オーヘンリーの言葉で、幸か不幸か全て体験したが人生の味を知るにはかなり年数が要り長い旅を重ねてからで甘いか辛いかを知る頃は三途の川の手前までの距離が要る。小僧は見合い相手と二度デートした。大船フラワーパークではリンドウやフジバカマが咲いて丁度紅葉が見頃を迎えていた。日比谷映画で観た「シェルブールの雨傘」は戦争で翻弄される恋人は遂に結ばれず美しい音楽が流れるなかで演じていたがラストシーンは雪降るガソリンスタンドで昔の恋人の幸せな姿を覗き見て、運命を嘆いた女心の悲しさの葛藤が印象的だった。互いに今までの経歴など話し合ったがそれより今後どのように仕事を発展させ、家庭を作って行くかが二人の課題で小僧は仕事の帳面や預金の全てと、在庫、動産を貸借対照表にして相手に説明し、仕事の内容を話して小僧を納得してもらった。あとは相手の気持ち次第・・返事を待っていた。