上京

私が故郷を離れたのは昭和20年代半ば中学を卒業して
間もなくのことであったが駅のホームには父や弟妹、
友人たちが見送ってくれて汽車が出た時その姿が見え
なくなるまでハンカチを振り続けた情景はいつまでも
忘れられないし、今もときどきに心をよぎる事がある。
母は「泣きとうないわ」と言って家の玄関で別れた。
帰郷で駅のホームに立つごと「ここが人生の出発点」と
感慨が沸いてくる。