小僧②

私が就職したのは15才であったが当時でもまだ年下がいた。
入社すると、まずジャンバー、ズボン、シャツ、下着二枚、
靴下二足、サンダル等が与えられ最初の三ヶ月は見習いで
小遣い500円、其の後は1000円で、休日は第三日曜日だけで
それでも午前は雑用がありほんとのフリータイムは僅かだった。
ともかく手に職を付けるのが目標で女工さんも含めて頑張っていた。
頭は坊主で先輩がバリカンでやってくれたし靴下の繕いも教えてくれた。
勿論全員が住み込みで私の与えられた寝部屋は六畳一間に
四人の共同生活で十二畳の大部屋には十人が寝ていた。
朝は六時起床、夜は仕事が十時まででそれから後片付けを
して風呂に入り就寝をするのが決まりで風呂も五右衛門で
新入りが薪くべをするのが慣わしで終わり湯は新入りだった。
しかしなによりの嬉しさはご飯をドンブリいっぱい食べられることで
原則は一汁一菜だが休日の前の夕飯や集金日などの日は天ぷらや
お刺身のご馳走が出ていっぱいにご飯を盛り付けてくれる女中さんには
いつも頭が上がらず、お使いや云い付けなど率先してしたものだった。
同僚たちは東北や北陸出身の田舎出が多く私も含めて貧しい家からの
上京組だったので食事はなにごとに代えられない至福の時間だった。