小僧(初恋)

harimaya2005-01-24

「あぁ、あの初恋の美しかった日を
 呼び返してくれる人があるならば
 あぁ、あの嬉しかった時のひとときでも
 呼び返してくれる人があるならば」
 “ゲーテ、初恋を失って”より
私の初恋は小学校3年生のとき、近所に住む
同級生の女の子が下校の時に私の切れた鼻緒
(当時は下駄)を直してくれて心がときめいた。
でも恋の意味を理解していたかは分からない。
実際に恋文など交換したのは中学校3年生の時で
なれそめは忘れたが神社の狛犬の台の下に格好の
隠し場所があってそこが二人の秘めたポストだった。
早春のある日私が卒業して上京のことを打ち明けたとき
彼女は泣いたが手を握ることさえ出来なかったときめきと
憂いだけの幼いころの青春の出発点だったかも知れない。
田んぼのあぜ道に吹く風は冷たかったが熱い気持ちは感じた。
空はあくまで青く雲雀が高く二人をあざ笑うように鳴いていた。
上京後は何度か手紙をいただいたがいつの日かそれも途絶えた。
わずか数ヶ月の出来事だったが初恋は誰もが通る青春の入り口のようで
数少ない?私の恋の履歴の中でも最も忘れられない人かも知れない。
人は成長するごと不純になっていく。小さな嘘など悪いことの積み重ねや
自分にやましい部分が増えていくのは生きるために仕方のない事かも知れないが
それらに流されて内面の理想にまで染み渡る怖さがとても辛い一時期があった。
何年かあと母からの噂話で彼女が嫁に行ったと聞いたとき今度は私が泣いた。