平均寿命

年を重ねると気になるのは平均寿命の数値だが、生があり死があるかぎり仕方がない。
播磨屋も古希を過ぎてどこまで続くのか、ともかく人生の最終楽章を歩いている。
織田信長が本能寺で「人生僅か五十年、下天のうちに較ぶれば、夢幻の如くなり」と
詠って非業の死を遂げたが、当時の日本の十六世紀頃の平均寿命は33年位だったそうで、
49歳の信長も長生きの部類だろうか。現在、世界で最も寿命が長い人口集団は日本の
女性で84、6歳だが、まだ記録更新中とか、いやはや、ますます女性は強くなっていく。
人類が歴史に登場したころは不明だが2000年前のローマ帝国時代は寿命20年位だった。
当時の幼い子供たちは半数も生きればいいほうで劣悪な環境や疫病の流行などで若い命を
落としていった。チフスコレラ、ハンセン、マラリア天然痘など数えればキリが無く
14世紀の中ごろ発生したペストはヨーロッパの人口を激減させた。そして天然の災害に
よる飢饉が襲うと、下層の貧しい人たちは凶作に飢えて弱いものから亡くなっていった。
将軍徳川家斉でさえ55人の子供を儲けながら成人に達したのは半数もいなかったらしい。
長い2000年の歴史になかで劇的に寿命が延びたのは19世紀の欧州の産業革命であり
公衆衛生や医薬の進歩などが、生活の質のかたちを変えて私たちを長生きにさせてくれた。
日本のような先進国に生まれた幸せは、自分の親の世代よりも長生きする可能性は確実で、
その子供たちの世代はもっと長生きする見込みは多いと言える。後進国では環境的にも
充分とは言えず、上下水道の不整備などで病気の蔓延やエイズの流行などでアフリカは
平均寿命は30年そこそこらしいが国家間のエゴの結果と言える。しかし幸せは必もが
長生きだけとは限らない。健康、家族、経済、生きがい、どの一つも欠かせない要素だが
有効に人生を使いきる事が、いまわのきわに「いい人生だった」と言える生き方だと思う。
播磨屋人生絵巻も巻数が少なくなっているが、余白をどのように描けるのか、課題は多い。