ホーム慰問と音楽療法(3)

ボランティアの語源は教会で神父さんが来られる前に奏でる即興曲(ボランタリー)と
云われるが、その短い曲のなかに社会に捧げる無償の愛が含まれている事からきている。
もちろんボランティアは相手のためより自分のために行うのが喜びで、慰問に思う事は
演奏の楽しさや、技術の向上にも繋がるわけだから、一石二鳥のこんないいことはない。
老人ホームに入居されている人は圧倒的に女性が多く、それは女性のほうが長生きなのが
理由だが、昔の歌を歌ったり体を動かしたりするのも男性が少ないのはどうしてだろうか。
日本の社会では男性は一流の学校、企業を目指して子供のころから左脳教育が一般化され
それが当然のような価値観が出来て、情緒や芸術などの感性を受け持つ右脳にも影響して
それが歳老いてからの男性の気難しさや、あつれきを起こす人たちの多い原因のようだ。
私たちは親から受け継いだ約38,000個の遺伝子で生きている。そのなかには良い遺伝子
も悪い遺伝子もあって、それだからって全て親の人生そのものを受け継ぐわけではない。
遺伝子は人体の部品のようなもので、環境や生きる気持ちによって組み合わせが変わって
方向付けがされていくのが現代の医学で分かってきている。例えば病気の遺伝子を持って
いる人も発症するか、しないかは環境的なものや精神的なもので左右されるものらしい。
その悪い遺伝子をいつまでも眠らせておく療法が、これからの医学の最大の課題だろう。
そこに音楽療法の重要性が生まれてくるものと思うが、いい音楽の、とりわけ聴く人の
心を癒されることは、ホルモンの量が増え免疫力が高まりリンパ球の働きもいいとかで
これからの研究の成果が待たれるところだ。生病老死は生きる宿命だが、たった一度の
人生を満ちたものにするには優しさを大切にしなければと慰問を通じて思う。