小ぬか雨

harimaya2005-06-15

日本列島も前線が停滞して梅雨の季節になった。
物憂い時期だがこのようなときは読書でもしよう。
藤沢周平「橋ものがたり」“小ぬか雨”の短編は
江戸の市井の町娘の、叶わぬ恋の葛藤の物語だが
(晩い時期に、不意に訪れた恋だったが、
はじめから実るあてのない恋だったのだ。
それが今終わったのだ。小ぬか雨というんだわ)
しっとりとした季節に読む本の情緒は胸を打つ。
藤沢文学の人情の細やかさは、小ぬか雨のように
音もなく静かに降る霧に似て読む時期には最高だ。
六月は女の人はきれいになると言う。湿り気が
肌をうるおすからか、薄着がまぶしく映るせいなのか。
梅雨時も悪くない。